オリソニ小説〜永久の月光花No.14
第三十四章〜魂〜
目を覚ますとまだ夜が明けたばかりだった。もちろん此処は廃都だから時計なんてとっくの昔に壊れている訳で、ずっと八時のままだった。
スパーク達二人は、何時まで起きてたか分からないけどまだ眠りから覚める気配はなかった。
サファリは普通に寝てるけど、 スパークはベッドから転げ落ちてる。
せっかくだから散策して回ろうと思い立って、教会をでた。石畳の地面、白塗りの壁。この国は清いとでも言うかのように白が多かった。此処は思えば宗教都だ。霊がいたりするのであろうか。
そして、都のはずれの家までたどり着く、せっかくだから入ってみた。此処は被害はそれほど大きくはなかったようで、家具が倒れていたりしているだけだった。
床は歩くたびにミシ・・・ミシ・・・と音を立てるがそんなに痛んでいる様子ではなかった。
キミ、久しぶりだね。いつ以来だっけ?
「だれ?」
声が聞こえた先には、白い靄(もや)のかかった少年がいた。年齢は僕と同じくらいでちょっと幼かった。
僕だよ、覚えてないの?ラネリウス王子。
「僕、ラネリウスって人じゃないよ。」
そうなんだ。じゃあキミはだぁれ?
「僕はシャオンって言うんだ。君は?」
僕は・・・誰だろう。僕ね、覚えてないの、自分の名前だけ。僕ね、死んじゃったの、君くらいの時、肉体を奪われて。
そう言って彼は僕の体をすり抜けて悲しげに微笑む。
僕は凄い役職の人だったの。僕よりもっと凄い人と同職についていたんだ。でもね、ある時糸が切れたようにその僕は消えちゃった。別の僕になっちゃった。止めたくても止められないんだ。肉体が無いからさ。
そう言って外を見る。
それに僕、地縛霊って奴になっちゃったみたいでさ、このお家からでられないんだよね。別にここで殺された訳じゃないんだけど。・・多分
「じゃあ君は覚えてないんだ。自分の事、何も」
うん、君のようにせめて、名前だけでも覚えていれば良かったよシャオン君。
「なんでわかったの」
きっと君も、本当の君を知っている人から見たら別人なんだよ君も。僕はどこかで君に会った気がするんだけど・・・気のせいだと思うけどね。
少年はクスリと笑った。
ちょっとすっきりしたよ。多分僕は、キミを知ってるんだ。覚えてないけど。それにしてもキミ、かなりの魔力を秘めてるみたいだけど、もしかしてアファレイドの出身?
「アファレイド?」
確か、前の声の人もそこで会おうって言ってたっけ。
そこら辺は覚えてないの?アファレイド魔道王国、この大陸で唯一本格的に魔術を習える王国。魔法で栄えている国なんだけどね。水産業が盛んで、他国との貿易の入り口でもあるんだ。
「ふーん、よくわからないけど凄い国なんだね」
この世界は歪んでしまった。
少年は何かを救うような仕草をした、しかしその手の中には何も無い
ゆがみを正すにはゆがみの根源を絶たねばならない。遥か昔、その国ができる前。名前でしか残っていない或る国のこと。
でもね、元の歪みを正せば今の歪みも正せるけど、今の歴史もがらっと変わってしまうと思うの。
守護者は生まれない。それによって悲しむ者も、今対立してる人々も変わってしまう。君達の関係も、それによって生まれない者も生まれる。
「生まれないの・・?だれが?」
色んな人が。君達がかかわってきた人の中からも何人もの人々が消えるだろうね。細かくは言えないのさ。根源を絶てば、君達の過去も初期化されるし、今の記憶なんて泡のように割れて消えちゃうさ。
「つまり、元を断つ事によって、いまいきてる大半の人の人生が変わるの?」
どうだろうね。僕は確信を持って言っているわけじゃない。何年も、汚れたいきものの争いを見てきたからだよ。
それが僕の、最後の結論。
そう言うと少年はスッと消えてった。
特に何があるわけでもない古びた古民家、窓から朝日が差し込んでいて、とても暖かい。
君の意図に何があるのかは僕には何一つ分からない。消えた彼は天にでも召されたのだろうか・・・。
僕はその暖かい光に導かれるかのように、大通りであっただろう通りに歩みを進めた。
「悪かったな、いきなり押し掛けて。」
そう言って微笑み彼奴はフードを外す。久しぶりに見たが、相変わらずの童顔で、変わった所は無いように見えた。見るからに掘建て小屋の我が家は、中に寝るためのベッドと、小さなローテーブルが一つと戸棚、キッチンは長年使ってないため、埃をかぶっている。
「別に良いんだ。来客が訪れることの方が珍しいからな。」
「座れ」そう言い、そっとテーブルに薄く張った埃の膜を払ってイスを引き、座るよう促した。手に持っていたカンテラの炎が室内を照らし出した。
「また汚くなったんじゃないのか?ここ、前来たときよりも更に汚れてるけど。」
「一応活動している所はこまめに掃除している。お前が最後に来たのは何時だ。」
「えーっと、三十年くらい前?」
「もうそんなに経つのか。」
自分にとって、1年は感覚的に一ヶ月くらいに感じる。それくらい長い間ここに居座ってると言うことだ。
「くしゅ・・・あんた、よくこんな所にずっといられるよな。しかも一人で。」
「悪かったな、一人だと暖めなくてもいい身なのでな。今暖房を点ける。」
言いつつ今にも凍えてしまいそうな彼にミルクティーをだす。
「砂糖、いるか?」
「三つ」
甘くないか?と思ったが角砂糖を三つ入れた。
別に自分は、食べなくても生きて行ける体だから、特に食べるものを置いてなかったことに今になって後悔した。せめて出せるものと言ったら、寒いこの地域でも保存の利く漬け物だけだ。言った所で彼は「合わないからいいって。」と言ってせっかく出した漬け物をまた戻す羽目になるだろうから
「用は何だ。」
「用がなくちゃ、来ちゃ駄目かよ。」
そう言って不服そうに此方を向く。
「そんな事は無いが・・・ちょっと待ってろ」
とりあえず部屋を暖めなくては、そう思い、奥の電源室に入った。こんな雪山の奥なんざ人なんか滅多に訪れることは無い。勿論電気なんか通るわけ無いので、発電機を置いてある。まずはそれを使わなくては家の電源は付かない。先ほどから言っている通り、普段は一人のため電気は点けない。別に不便は無いからな。
「あ、それ俺があげた奴じゃん。」
「待っていろと言っただろうが」
「別にいいだろ?待ってろって、あんたが明かり持ってったから真っ暗だし。こうなんかさ、普段目隠しして生きてるようなもんだからさ、こんな人里離れたとこに来た時くらいいいだろ?羽を伸ばしたってさ」
「魔法は使うなよ」
「分かってるって、気配察知されたらことだからな」
俺が許可したと思ったら彼奴は鼻歌を歌いながら奥の電子板の方に寄って行った。
「なぁなぁ、これなんだ?俺が前来た時には無かったよな?」
「あぁ、それは監視画面って奴らしい、ウォイスがつい最近持ってきた。・・・・弄るなよ」
俺もまだ使い方がよく分かってないんだ。などと言えるわけが無いが。
「わかってるって、これって、あんたん家の前とか、里周辺の様子・・・?カメラで写してるのか・・・。ウォイスも近代的なものを持ってきたんだなー。」
そう言い珍しいとでも言うかのように画面をつつく。意外とアナログなのかもしれないな、こいつは・・・俺も人のことを言えないが
「まぁ、来たのは本当に二三日前だ。」
「それにしちゃ部屋が埃だらけだったよな」
「・・・・留守中に瞬間移動で置いて行ったんだ。手紙だけ残して」
「ふーん、で、肝心の説明書を置いてってくれなかったから使い方がまだ分かってないのか!」
「悪かったな!あと、読心術は使うな、気味がが悪い。」
「はーい」
そう言って彼奴はテーブルの方へと踵を返した。
俺も、発電機の紐を引っ張り、電気を起こした後、そこを出た。
「あ、暖かいの来た来た。電気も点いたし!やっぱこうだよな、ログハウスってのは」
「子供か」
「こどもじゃない。」そう言って膨れるそいつの正面に俺も腰掛けた。戸棚から取ってきた漬け物を片手にもって。・・・やっぱり子供だ。
「ちょうどいいからお前に渡す。」
そう言って袋に入れた鈍く光り輝くそれを渡す。彼奴は中身を確認して内心びっくりしたように俺に聞き返す。
「いいのか?俺に預けて、もしもの事があったら・・」
「そこはいいとはいえないが、各地で異変が起こり始めたそうだ。それくらいはお前も察しているだろう?」
「それは俺が行った町でもそんな事を耳にしていたけど。」
「最近、闇の住人どもが麓(ふもと)の集落で彷徨いてるそうだ。エメラルドの位置がばれれば、それを求めて幹部もこちらへ向かうだろう。」
「だから俺にそれを渡すのか?」
「いつでも良いんだ、お前は近いうちに遠方へ旅立つそうだが、それまでの間・・・しばらくは港町で宿泊しているのだろう?」
「ん、まぁな。この時期は天候が安定しないし、潮の流れが問題で、アファレイド側から出ると、かなりの回り道になるし、潮の流れで事故も増えてるそうだからな。北の港町から出る。」
魔法は使えない。察知されると危険だからだ。
「ここが襲われたらまず魔法が使えない俺のエメラルドが奪われることは確実だ。ならば、先にお前みたいな奴に渡しておくことが懸命だと思ってな。」
「じゃあ、俺はどうすれば良いんだよ、アンタん所に選ばれし者がもう向かってきてんだろ?」
「そっちは俺がどうにかする、だからお前は、あいつらが来るまでの間、港町に潜伏していてくれ。」
「なんか潜伏って、どっかの映画みたいだよな!」
「もう既にお前はずっとそんな生活だろうが」
「まぁな」
「くれぐれも、住人には見つかるなよ、後が怖い・・・」
「分かってるって」
そう言ってミルクティーを一気に煽った。カチャン、と小気味いい音が辺りに響いた。
*********間*******
「スパークー朝よー」
と言うサファリの如何にも棒読みですよーと発言しているような目覚ましコールと頭の鈍い痛みで目が覚めた。
「って―・・・ん―・・・なんだよ。・・・・・あれ・・・シャオンは?」
「知らないわよ、目が覚めたらもういなかったもの」
サファリが指差したシャオンがいた場所にはタオルケットが綺麗にたたまれており、その脇に鞄がおいてあった。
「ふーん、ってかお前、俺のこと殴っただろ。」
「殴ってないわよ。眠気覚ましの運動にキャンパス地面に叩き付けてたのよ。」
「それが地面じゃなくって俺の頭だったんだろうが」
「ばれた?」
そう言って照れ笑いする。
「ばれた?じゃねぇよ・・・。包帯とかねぇかクロースに聞いてくるわ・・・」
「そんな大げさな・・・・・あ」
「これが大袈裟じゃねぇって言い切れんのかよ。」
そう言って手袋に付いた血を見せる。
「どんだけお前強く殴ったんだよ。キャンパスの角でやったのかよ・・・」
「そういえば、一回だけガコンって木枠で・・・」
「本当だったのかよ・・・。」
「それでキャンバス壊れちゃったから。ほら」
そう言って壊れたキャンバスだったであろうものを持ち上げる。どうやら絵は外したようだ。
「起きたか。・・・おきてなかったら蹴り起こそうかと思ったぞ」
「「・・・・アッシュ」」
扉を開けて入って来たアッシュは、林檎を両手に持っていて、殆ど前が見えない状態だった。アッシュは入ると素早く足で扉を閉めた。行儀が悪いが・・・。
よいしょと言い一番近くにあったベッドにその山をぶちまける。そのまま自分もベッドに座り込み、一息つく。
「悪いな。ここには厨房ってもんがないんだ。悪いが各自好きなだけ食って・・・って、シャオンは。」
そう言って再び立ち上がり周りを見回すがいないと見えたら再び座り込んだ。
「あんたもシャオンの行方知らねぇのか?」
「知らない。第一俺は朝山でこれ採ってた。」
そう言ってうしろに転がっている林檎達を指差す。この様子だとかなり疲れているようだ。若干足元がふらついていた。
「捜して来い。仲間なんだろう。」
そう言って仰向けに寝転がって目を閉じる。
「じゃあ探しに行くか。」
そう言って立ち上がる俺に制止をかけてサファリは
「まって、鞄に林檎入れていきましょうよ。ほら、スパークも」
そう言ってシャオンが持っていた鞄の中に林檎を詰めていく。
「はいはい。」
と言うわけで、二人して林檎を鞄に詰めて、アッシュの分を二つだけのこしてアッシュに声をかけたら案の定彼は爆睡していた。
「寝てるのかよ。」
「いいじゃない、そっとしておきましょ」
そう言ってサファリは俺の前を通り過ぎて扉から出て行った。俺も逸れないように後をついて行った。
*********間*******
待ってるの、僕はただ待ってるの。
君のために待ってるの。
帰ってくるのをいつも待ってるの。
高い所でね、いつも変わらないお空を眺めてね。
いつもと変わらぬ静寂の中で。
君がいた町を見つめて待ってるの。
君は来ないの。でもまつの、僕は待つの。
お家が壊れたって、国が滅びたって、僕はそこで待つの。
ずっとまつの、君が帰ってくるのを。
帰る所が無くなった君を待つの。ずっと・・・ずっと・・・・
僕が絶対に、おかえりって言ってやるんだ。
だからさ、必ず帰ってきてよ・・・・。
「・・・!」
気がつけばそこは彼等が寝ていたベッドの一つだった。
「ッ・・・・」
体を起こすと首と腰に鈍い痛みがあった。そこで初めて寝違えたのだと思った。
「・・・・・ずいぶん懐かしい夢を見た・・・・」
ベッドに手をつき起き上がると、足元に林檎が一つ落ちていた。別にみんな持っていってもよかったのにな。そう思い拾い上げて窓の方へ寄る。時間的に見て太陽の位置があまり変わっていないことから一時間弱しか寝ていないだろう。俺は慣れた手付きでブーツを履き直し、少々乱れた毛並みを整えてその場を後にした。
扉を閉めると共に、何か物が落ちた音が部屋一面に響いた。
************************
「エノ、ナット貸して、あとスパナ」
「はい分かりました。電子メモリのコピー、完了致しております。」
さすが、それも貸してよ。そう言って差し出された左手にまず、先ほどのナットとスパナをのせる。
「にしてもよく錆び付いて壊れかけてるメモリから以前のデータを読み取ることができたね。」
口にナットを咥え、慣れた手付きでボルトを締めながら聞く。普段からは想像ができない程に楽しそうで、嬉々しているように思えた。
「Dr.に作っていただいたのです、このような単純なメモリデータも読めないようなら私はこのデータを初期化しますよ。」
「そんな事言わないでよ、君に助けてもらってる僕の身になってくれないかな」
「すみません。」
別に構わないんですけどね。そう言って溶接を始める。辺りに火花が飛び散り、私はその明るさに目を細めた。
「よし、あとはこれで、君のバックアップしてくれたメモリを読み込めば大丈夫だと思うけど。」
そう言って額に浮かべた汗を拭い、メモリを貸して、と左手を伸ばしてきた。それにしても、設計図を見ずによくできるなと思った。彼の才能なのだとは思っていたが・・・・
「Dr.正直、いやな予感がしてなりません、メモリのバックアップの途中で不吉なデータが出てきました。彼が人を殺すためのデータ、自我に宿った悪い意識が・・・・それでもやりますか。」
そうだ、彼がこんなボロボロになる前に何をしていたのが何となくだが予想がついた。紅月の配下だったのだろう。私でも目を瞑りたくなるようないやな情報ばかりが入っていた。殺すためのリスト、殺した人物のリスト、その中に私のよく知るある人物の名も入っていた。
「大丈夫だよ、僕ががんばって書き直しもやってみるから、さ」
さ、かして。そう言って再び伸ばされた手に、私は渋々メモリを渡した。
「動かすからね。」
そう言ってメモリを差し込んだ瞬間、爆音が響いた。
衝撃でDr.が飛んで、私は彼をギリギリの所で受け止め私が下敷きになる。
「ガナール・ザ・イプシオン・・・」
ピピピピ・・・・ピピッピピピ・・・
モールス信号のような高音が響くとともに、如何にも機械的な声が、研究室を包みこんだ。
「コロス・・・・・・アイツヲコロス・・・・」
そう言いながら、私の方に歩み寄ってきた。Dr.は衝撃で気絶していた。私は今更ながら、感情の部分を消しておくべきだったと後悔したが今更遅い。
「お前は誰だ。」
「俺はティルト、お前は誰だ。紅月様に刃向かう物ならばこの手で殺さねばならぬ、この手で・・・・コノテデ・・・コノテデ・・・・」
ティルトと名乗った彼は、まだ不安定なようで、時々声帯がおかしくなるようだった。服装はメイドさんのように可愛らしいが、声から見て男性だ。
そして、「倒さねばならないな・・・」そんな気がした。それほどまでに危うい、このままでは宮廷内が大騒ぎになるであろうと私は思った。
「手合せを申し込む、この宮廷内を荒らすのであれば、この国の衛兵を指揮している私を倒してから荒らすがよい。この国の平和は私が守るのだ。」
「ガナール・ザ・イプシオンは何処だ・・・・俺の獲物は彼奴だけだ。でも彼奴を庇うと言うのであれば話は別だ。その件、受けて立とうではないか。」
その瞬間、彼の目つきが変わった。私が最も恐れる・・・・・殺戮の目に・・・
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宮廷魔導士の手記 その1
つい最近、我が国の王が病死し、王子だったラネリウスが即位した。
彼は王に即位しても、以前と大して放浪癖は変わらなかった。一時期魔道学校へ通った数年間は無かったが、王宮に戻ってからは再びこっそり出掛けるようになった。しかも、魔法を使うようになったために、目を離すとすぐ瞬間移動魔法を使って王宮外へ出て行ってしまう。公務の途中であってもだ。これが問題の種である。
そして、自分が連れ戻すのがもはや、お決まりとなってしまっていた。
「いい加減にしてください。何処でお命が狙われるか分かりません故、王となった以上、王の御身はお大事にしてくださいと散々申しているではないですか!!」
「いいじゃないかウォイス、僕こうやって町中を廻るのが好きなんだよ。どういう改革をして行けばいいかとか考えられるし、ラヌちゃんにあえるし。それに近いうちに“結婚”って奴をするみたいだし、そうしたら僕、自由に外に出られなくなるんだよ?それまでは出たっていいじゃないか。自分も楽しくなくちゃねー。過労死しちゃうよ。」
貴方は過労死どころか安楽死だ。過労死するのは自分の方だ。いつも通り、ため息をつく。
魚屋で立ち話をしていた王を見つけ、説教をしたのは良かったが、いつも通り反省をしている様子は無かった。
「とにかく、明日は姫君との見合いなのです。体調を管理していただかないと。本日は肌寒いですからもうこの辺で・・・・ってあれ」
すぐ目の前にいたはずの王の姿はそこには無かった。周囲を見回した所、大図書館から出てくるラヌメットの姿が目にとまった。そしてその脇には王の姿・・・・・・
「あ、ラヌちゃん!!久しぶりだねぇー」
「あ、ラネちゃんお久しぶり!王様になってまだ三日だけどどう?」
また瞬間移動魔法使ったのか。開いた口が塞がらないとはこの事だ。呆れを通り越してその態度に敬意を表すぞ。(悪い意味で)
ラヌメットの方へ視線を移せば、彼の腕の中には大量の本が抱えられており、勉強に使うようであった。
「別に変わんないよー、だってほら、今日もこうして来た訳だし」
本を地面にそっと降ろし、俺に気がついたのか一瞬固まったものの、再びおうの方へと目をもどした。
「またウォイスに捕まったんだ。」
「うん。いつも捕まっちゃうんだよ。困ったなー」
「困る程でもないと思うけど。むしろウォイスが可哀想だよ」
そう言って降ろした本を一冊一冊丁寧に鞄の中にしまう。それは最近話題の魔法グッズで、いくつも道具が入るそうだ。こいつも流行に乗っかるタイプなのだろうか。
「僕これから勉強するんだ。あと三日で卒業試験だし、首席で合格してやるんだ!!」
「そうなの?頑張ってねぇ。」
「今日はこれから勉強するんだ。ごめんね、せっかくあいにきてくれたのにさ。合格したら絶対に会いに行くから!」
キミも早いとこウォイスと一緒に戻った方がいいと思うよ。そう残し彼は瞬間移動で消えた。
「今日は駄目かぁー。」
そう言うと、王はムスッとしたままこちらを向いて一言「先に帰るねー。」と言って消えた。
自分の必要性って一体・・・。
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その後、基日
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「ちんじょなべ」
なんだか今自分は、とてつもない場に居合わせた気がします。
突然の出来事に驚いて僕は手に持ってたティーカップを取り落としかけて、中身をテーブルにまき散らしちゃいました。あぁ、あとでウォイスさんに殺されますかね(笑)
「あ、喋ったねぇ。ふふふ。」
王は笑いながら王子を抱っこしてて、僕の師匠であるウォイス様は扉の真ん前で口を開けてフリーズしてます。
どう表現すればいいのでしょうか、不思議なムードが漂ってます。王の周りがお花畑だとしたらウォイス様の周りは・・・なんでしょう・・・。とりあえず凄い珍しい風景だって事が言いたいのですね僕は。
王子様が喋られたおめでたいムードなのですが、部屋の半分フリーズしてるため若干残念ムードなんです。
そして王子は、先ほどから意味不明な単語「ちんじょなべ」なるものを連呼しているのです。王には意味が分かるらしく頻りに頷いてます。
「ウォイスどうしたのー?そんなとこで止まってないで、こっちきなよ。」
ウォイス様がそうなってるのは多分貴方の抱えてる王子様のせいです。後止まってるのではありません、固まってるのです。
「え、あはい。ところで王、今王子はなんと・・・」
「それ僕も知りたいです!」
王の一言でフリーズが解除したらしいウォイス様は、軽く咳払いをして歩み寄る。僕も便乗する。
「金魚鍋だよ〜。」
「「・・・・・・・・はい?」」
唖然としたまま 今度は師弟仲良くフリーズしちゃいました。
なんですかその食べ物は、どんだけ奇怪な食べ物ですか、というかそれ以前に食べられる食べ物なんですか。絶対に食べられない食べ物を言ってますよね、というか食べたらお腹壊しますよね。
王は特に気にする素振りも見せずに王子に話しかけてますね。僕達はどうすればいいのでしょうか・・・。
「ウォイス、持って〜」
そう言って王子をウォイス様の方に向かせて床に降ろす。すると王子は王の意図が分かったかのようにフリーズしてるウォイス様の足元に寄ってくる。
ローブが引っ張られる感覚で起動したらしいウォイス様は一瞬ビクッとしてから、王子を抱き上げた。
「王子、パパですよ。パーパー、PAPAです。Fatherです。Grandfatherではないです。あなたの父親です。Your fatherです。」
何王を指差して言ってるんですか貴方、まだ年端も行かない王子に何英才教育施してるんですか、無理ありすぎですよ。でも地味に発音がVery Goodじゃないですか。そして王子、いらない教育受けないようにその人の話は聞かないでください。
「いってみなさい。」
こんなんで言うもんですかね。
「ぱーぱー」
あ、言いました。しかし、王に向けてではなく、ウォイス様自身にです。かわいそ過ぎます。ウォイス様、またフリーズしてます。
「うぉーす。」
何か、本当に可哀想になってきました。王子はウォイス様に二つのあだ名をつけてくださりました。「うぉーす」(ホースみたい)と、「パパ」である。
可哀想ですが僕にはどうしようもないです。何故なら王子はもうウォイス様にしがみついて「ぱぱ、ぱぱ」連呼してるのですから。
しかもちゃんと王は「父上」と呼ばれてました。
仕方ないのでこの場は見なかった事として、僕はテーブルにこぼしてしまった中身を拭き取りました。
あとがき
どうも、何か暑くなってきたですね。なんか強は三十度超えたらしくてさすがに涼しい我が家でも死にかけてました。いつも死んでますがね。私は
にしてもこれでも冷房を点けない我が家はさすがであります。というか1台しかないのであります。
田舎者は肝が座ってると言うのはまんざら間違いでもありませんね(笑)
今日は麦茶をすすり、sasakure.UKのアルバムをBGMにしつつパソコンで書き書き・・・でありまする。
その間気がかりだった事は、この麦茶がカゲ◯ウデ◯ズの第一巻のシン◯ローのPCごとく、キーボードにかかって我が父のPCが、おじゃんになるのではないかと言ういらない心配をしてました。実際コップ半分程麦茶が残ってまする。
今回は全く本編とは関係がない、小話でありまして、若干キャラを弄って遊んでみたんです。
ちょっとしたコメディっぽく見てもらえたらなぁ・・・みたいな??
そろそろ私も飯っぽいのでそろそろ終わります。頑張って本編も作って行きたいと思いますのでよろしくお願いします。
ところで弟の部屋から冷気が伝わってくるのですが、気のせいですよねぇ?
ちょっと電源ボタンとリモコン取りに弟の部屋を覗きに行ってきます。
ではまた
H.25.6.12 黒羽@
テスト明日なのに勉強しないのはバカだけです=私
長編オリソニ小説 〜永久の月光花〜No.13
- これは、別のサイト「動くメモ帳」にて公開中の長編オリソニ漫画の小説版です!
- 漫画とは少し表現が変わっていたり、会話文等が少し変更されている箇所もありますが、基本ストーリーは一緒です!
- まだまだ漫画は始まったばかりなので、続きの話が出来次第二巻、三巻、と更新して行こうと思っております。
- 尚、二巻から先は書き下ろしになりますので、pixivの方には出しておりませんのでご注意ください。
- 誤字、脱字等がございましたら言ってください。
この小説を読む際のご注意
・この小説は、あくまで私のオリソニ、を中心としたオリジナル小説です。
・この小説と、ほかのサイトにうPした漫画をセットで読んでいただくと、また面白いと思います。
・この物語の舞台は、ソニック達がいた、100年後の世界です。
それをご了承の上でお読みください。OKな方のみどうぞ
第三十三章〜廃都〜
テュリネイトを立ってから三日が経過した。未だに景色は変わる事も無く、鬱蒼と茂る針葉樹の木々がザワザワと不気味に揺れている。更に寒い。
ただ一つ、違っていたのはテュリネイトを立ってから、だんだんとカオスエメラルドの輝きが増して来ているように見える。近くにカオスエメラルドがあるとでも言うのだろうか・・・・。
「あ、また光ったよ。」
そう言って、前を行く三人に話しかけたが、誰も反応はしてくれなかった。最初のうちはみんな反応してくれたんだけど・・・・。
もう三日もこの景色が変わらない森を歩いているのだ。皆いい加減飽きて来たんだな。と僕は思った。
もともとこの道は宗教都であったアポトスへ通じる道だったらしい。しかもそこにはカオスエメラルドもあったらしいけどある事件でそこが消えてからずっと行方不明。
「もしかしたら彼処でも見つかるのかなぁ・・・?」
ぽつりと呟いた僕にスパークが反応した。
「何がだよ」
「え、カオスエメラルド。」
「まだ先なんだろ?そこまでは、あーあ、誰でもいいから会いたいぜ。」
「俺リンゴ以外のものが喰いてぇ」
「あたし、ちゃんとしたとこで寝たい」
そう言って三人一斉にため息をついた。
「僕何でも良いんだけどなぁ・・・見覚えあるんだよこの道・・・。」
僕は何でも良いんだ。自分の記憶の手がかりになるものなら・・・。
「ん・・・?」
急にステアが立ち止まって辺りを見回した。一カ所に焦点が定まる。
「俺・・・急用思い出したわ。ちょっと先行っててくれよ」
そう言って僕らの返事も待たずに茂みの向こうに駈けて行った。
「何だ、彼奴急に・・・・」
「どうせまた食べ物でも見つけたんでしょ。彼奴の言う通り、先に行きましょう」
どうも僕にはそう思えなかったんだけどなぁ・・・。あの目はいつもの獲物を見つめるような目じゃないと思ったんだけど・・・
「ほらシャオン、早くっ!!」
「あ、うん」
気がついてサファリ達の方を見ると、かなりの距離が開いていた。僕はあわてて二人の後を追いかけた。
ステアが抜けてから何時間がたったか分からないけど僕達は、歩いて行くうちに開けた所へ出た。時刻はもう夕暮れ時、しかも高山だからか、きりが出て来て、視界はあまりよろしくはなかった。
「今日はここで泊まろうよ、広いから見通しがいいし。」
谷川の道に木は生えていなくて、ふもとの家々の明かりがぽつりぽつりとつき始めていた。
「なぁここ、かすれてて読みにくいんだけどよ、「アポトス」って書いてあるぜ」
「あ、本当ね、石の壁にアポトスって・・・・というかあんた読めたんだ。あんな字が汚いのに」
「失礼だなお前!!」
「え、アポトス・・・?」
二人は石の壁をジッと睨んでいた。僕も行ってみたけど、やっぱりアポトスって書いてあった。
「って事は、どこかに入り口があるんだよね・・・」
僕達は一斉に周りを見渡した。もう暗くてほとんど周りは見えなかった。
「あ、あった!!!」
サファリが急に叫んで駈けて行った。彼女は元から白いので少ない光でも反射してよく分かったから追いかけたんだけど、途中でスパークにぶつかって尻餅をついた。
「って―な、いきなりぶつかるなよ」
「キミは元から黒っぽいんだから気をつけてほしいよ」
口々に言い合った後、今度はぶつからないように僕がスパークの手を引いてサファリの後を追いかけた。
追いかけて行くと、サファリは大きな橋の前で立ち止まっていた。
「どうしたの、サファリ?」
「今日ここに泊まらない?何かいいよね、若干ぼろい感じが!スケッチによさそう」
そう言って僕達二人に目を向けた。満面の笑みで・・・。
「俺はいいけど・・別に寝るだけだし。」
「僕も同じく」
・・・というか、他にちゃんと寝れるような所が無かったって話なんだけど。後から僕達二人で各家々を見回った所、ベッドの中身がはみ出ている家や、床に穴が空いている家、酷い所は家の土台しかなかった。しかもそれは、この大きな建物を中心に被害が拡大している事が分かった。
「おじゃましまーす・・・・・誰かいませんよねー?」
ガチャリ、と大きな音をあたりに響かせて扉を開け、サファリが中を確認して、足を踏み入れた。大丈夫だったようで、僕達も続いてはいった。
中は広かった。所々修理されている所があったけど、別に気には止めなかった。
後方で、ガチャリと大きな音を立てて扉が閉まった。
僕達は気にせず、とりあえずこの大きな建物の中を散策して回る事にした。
「お前ら、こんな所で何をやっている。」
其の声は、二階の広間のような所来た時に聞こえた。
「誰だ!!」
周囲を見回すが、声の主は見当たらなかった。
「それは俺が聞きたい所だ。観光目的で泊まられるのは御免だ。出て行ってもらおうか」
そこでようやく僕達は、声の主が上にいる事に気がついた。そいつは月明かりの漏れる穴の開いた天井に腰を下ろしていた。
「とりあえず聞かせてもらおうか、何故この場所へ来た?お前らは何者だ?」
「僕達は、樹氷の森まで旅をしているんだ。其の道中でここに立ち寄ったんだ。」
「それじゃあだめだな。皆そう言ってここへ上がり込む。汚らわしい。この神聖な場所にそんな偽りを言う輩は俺が全て排除した。お前らの本当の目的は何だ?」
答え次第では殺す。そう言って声の主は黙った。
「俺は、よく分かんねぇけど、ある使命でカオスエメラルドを集めているんだ。その道中でここに立ち寄った。証拠なら・・・ほらっ、ここにあるぜ」
そう言ってシャオンが持ってた鞄の中から青いカオスエメラルドを取り出し見せつける。カオスエメラルドは辺りを青白く照らし出した。
「・・・・なるほど、ウォイスがくれたようだな其の鞄は、つまりお前は選ばれし者・・・か。すまなかったな。」
そう言って声の主は地面に降り立つ。カシャンと金属同士がぶつかる音が響いた。
「ちょっと持っていろ、今明かりをつける。」
主の足音が遠ざかり、数分。ボッと言う音を立てて両脇の蝋燭に順番に灯が灯ってゆく。俺達はあまりの明るさに目を瞬(しばたた)かせた。改めて光のある生活がどんなに裕福なのかが分かった。
「客人など久しぶりでな。ここ数十年光を点けた事はなかった。」
そう言って奥から出て来た彼も、黒いヘッドバンド(?)で両目を覆っていた。背中にはジャケットと同化していて気がつかなかったが、羽が生えていた。赤い毛は、後で束ねられており、腰くらいまであった。
「数十年って・・・お前いくつなんだよ」
「知らない。しばらく観光目的の輩は排除してたからな。ちゃんと人を泊めたのはかなり昔だ。」
そいつはまだ慣れないようで、黒いヘッドバンドをしたまま俺の前まできて答える。
「名乗るのが遅れた、俺はアッシュだ。アポトス崩壊後、否それ以前からずっとここで暮らしている。」
そう言って外の方を見つめる。本人は見えていないのだろうが。
「俺はスパーク。んで、こっちの猫がサファリ。んで、こっちが—」
「シャオンって言うんだ。」
俺の言葉を遮ってシャオンが自ら答えた。
「!?シャッ!!」
アッシュは、シャオンが名乗ると驚いたように口を開き、慌てたように黒いバンドを目から外した。
「お前は・・・・?!」
アッシュはシャオンの真正面まできて、目を見つめる。シャオンはそれが不思議だとでも言うかのように首を傾げて「どうしたの?」と言った。
「否、何でも無い。部屋に案内するからついて来い。」
アッシュは左目にかかった前髪を搔き上げて先頭を歩いて闇の中へ消えて行った。
通された部屋は、客間だった。天井や壁の所々穴があいていたりしたが、気にするなとアッシュは言った。これでも修理はしたらしい。ベッドに転がったが、凄く寝心地が良かった。
「自由に使っていいからな。ただし、穴はあけるなよ。」
「分かってるよ。そんな事はしないよ僕達。」
シャオンはそう言って荷物をベッドの脇に置いた。
「分かってはいるがな。あとスパーク。お前に話がある。支度が終わってからでいい、後で上まで来い。」
「え、お、おぅ」
スパークが返事をすると満足げに微笑み、扉を閉めて出て行った。
「上って。もうここより上の階はなかったよな」
「きっとあの屋根の上なんじゃない?ほら、アタシ達を迎えたとこ。」
サファリはそう言いながら、鞄の中から画板を取り出す。
「なぁシャオン。ステアッて何処行ったんだろうな?ちっとも来る気配がねぇし・・・・・」
「・・・・・・・・」
「シャオン・・・?」
隣を見ると、シャオンはもう小さな寝息を立てて寝ていた。
「きっと疲れたのよ。スパークも支度すんだなら行った方がいいんじゃない?」
「んじゃあ行って来るな。」
「はーい。」
こうして俺は部屋をあとにした。
第三十四章〜主の思考〜
「意外と早かったな。」
屋根の上で月を見ていたアッシュは俺に気がつき降りて来た。場所を変えようと言って、そのままもともと広場だったのだろう場所まで出る。
「ここはもともと宗教都だった。更にそこでエメラルドも守っていた。其の事から観光客も絶えなかったんだ。ある年、アポトスでカオスエメラルドを公開した時期に事件が起こった。それが通称アポトスの悲劇。この惨事でこの都と客として来ていた約五千人と街の人々のべ一万五八千六百人もの人が亡くなった。」
「それが、アポトスの悲劇。」
「そうだ。そして、カオスエメラルドも奪われた。主犯は紅月の賛同団体かと思われる。俺は、其の紅月について、お前に教えなくていはならない。そして、シャオンの事についても」
「シャオン。お前、彼奴を知ってるのか!!」
「知ってはいる、だがしかし教えるのではなく、本人自らが思い出さなくては意味が無いと思っている。」
そう言って空を見上げる。
「単刀直入に言うがシャオンは、この時代にいてはいけない存在だ。歴史上、この時代にいるはずの無い人物なのだ。」
「どういうことだよ。俺にも分かりやすく言ってくれ。」
「つまり、この世界にいるはずの無い人物って事だ。俺の知っているシャオンは、この世界のシャオンとは違う。きっと、彼奴が全てを思い出した時、お前の知っているシャオンとは明らかに違う奴になるはずなんだ。」
「つまりあんたが言いたいのは、シャオンが全てを思い出すと、俺達が知ってるシャオンとが違うシャオンに、つまり、あんたが知っている元のシャオンに戻る訳なのか。」
「そう言う事だ。シャオンは紅月と接点があった。俺はそれを知っている。彼奴は紅月を・・・・・ラヌメットを庇おうとした。彼奴を最後まで信じて封印に細工までしてな。」
ラヌメットはおそらく紅月の本当の名なのだろう。明らかにアッシュの顔つきが変わったのは明白だった。
「そのせいであいつは・・・・自分から引きずり込まれたんだ。この時の流れに。ラヌメットとは幼なじみだった。彼奴は優しくて親切で、あんな事をするような奴じゃなかった。何処で道を間違えたのか、あいつは黒魔法に魅了されて行った。そして彼奴は、王を殺した。」
「紅月の始罪・・・か、それが」
「よく知っているな、お前があのスペードの息子とは思えない。そのあと、王宮から王子を連れ出して逃げたのは当時、もう一人の宮廷魔導士だった男だ。ラヌメットも巻き込まれたんだ、この時の流れに。彼奴は権力のために力を振るうような奴じゃなかった。そんな事はしようともしなかった。」
「でもよ、主犯は紅月なんだろ?」
「まぁな、しかし俺はどうしても信じられないんだ。彼奴が何故あんな事をするのかが・・・
すまなかったな、もう返っていい。疲れただろうに悪かったな。」
そう言ってアッシュは俺の返事を待たずに飛んで行った。仕方ないので俺はひとまずベッドに入って今夜の出来事を整理する事にした。シャオンの事は、本人には言わない方がいいのだろうか・・・思いつつ、俺は元への道を引き返した。
「ねえエノ、あそこの扉の中にある部品取ってもらえるかな」
「いいですがDr.貴方は何をなさるおつもりで?」
「久しぶりに機械いじりでもして見ようかなって思ってさ。」
そう言って研究所脇にあった工具箱を机の上に置く。ここはアファレイド王宮内の研究施設。一面鉛の色をした金属でタイルばりになっているため、足音だけでもかなり響く。
「これでしょうか?」
「それですそれです。せっかくだからエノもいっしょにやりましょうよ。」
「いえ、私はサポートに回ります。」
「そう・・・?」
カシャリと置かれた部品には「ティルト」と書かれていた。
NEXT→No,14
長編オリソニ小説 〜永久の月光花〜No.12
- これは、別のサイト「動くメモ帳」にて公開中の長編オリソニ漫画の小説版です!
- 漫画とは少し表現が変わっていたり、会話文等が少し変更されている箇所もありますが、基本ストーリーは一緒です!
- まだまだ漫画は始まったばかりなので、続きの話が出来次第二巻、三巻、と更新して行こうと思っております。
- 尚、二巻から先は書き下ろしになりますので、pixivの方には出しておりませんのでご注意ください。
- 誤字、脱字等がございましたら言ってください。
この小説を読む際のご注意
・この小説は、あくまで私のオリソニ、を中心としたオリジナル小説です。
・この小説と、ほかのサイトにうPした漫画をセットで読んでいただくと、また面白いと思います。
・この物語の舞台は、ソニック達がいた、100年後の世界です。
それをご了承の上でお読みください。OKな方のみどうぞ
第三十一章〜互いの信ずるもの〜
「なぁ、このまま彼奴を信じるべきなのか?」
「そうするしかなかろう。この世界を救うのに、あの方の持論は合っているとは思えないが、一応筋は通っている。」
「でもよ、さっきの奴らが本当にこの世界を滅ぼすとか言う敵なのかよ!?むしろ彼奴らの方が正しいんじゃないのか!?」
頼まれた事を彼奴に伝えて、王国の姫君達と別れた。ここはこの国で最も綺麗なところ。昔の悲劇で死んだ王もここが好きだったという。
それでもこの季節は少し冷たい海風が髪をなびかせる。それが心地よいのだが。
「しかし、彼奴らを裏切る訳には今更いかないだろう。人質として、この国全員の命が取られているのだからな。」
「そうだけどさ・・」
「それに、彼奴らの持論が違うと言う決定的な証拠も、論もないしな。」
「まぁ、そうだな・・・。俺達はとりあえず相手の懐に潜り込む事が先決だしな。信用されねぇと・・・・。」
そう言って、連れの彼は細く微笑んだ。
「そろそろ行こうぜ、暗くなるとここでも危ないだろ。」
「そうだな・・。」
それを私がいうや否や連れは駆け出した。何でも今日はテレビで特別放送があるとか無いとか・・・そんないつものような光景は、私を落ち着かせた。
別に彼奴らの側についた事に何も悔いてはいない。だが強いていうなら、私は・・・少々後悔しているかもしれない・・・・。
――――――――――――――――――――
「紅月様、大丈夫ですか!?」
「少々魔力がたりなかったな、あの女の体もあっちへ置いて来てしまった。」
闇一色の黒い部屋に、負傷したライザと、祭壇の上に亡霊のように形がおぼろげな紅月の姿があった。
この部屋は特殊な魔法で作られた部屋であり、この部屋のみ、紅月は対人と会話を交わすと事はできるが、危害を加える事はできない。
稀に声が機会音のようになる事があったりするようだが、それ以外は問題はない。
「体がなければこの世の者共に影響を与える事はできないではないか・・」
紅月はそう言い手からパシュッと炎を出すが、物に当たる事もなく、壁に当たったとたんに泡のようになって消えてしまった。
「まさか私もあのような魔術を使われるとは・・・私の失態でございます。」
「あやつには何の魔力もないはずだ!!何故ルシアでも届かないアーチメイジの技を使えたのだ!?」
「それは私にもさっぱり・・・」
「とりあえず、早くカオスエメラルドを集めるのだ。選ばれし者よりも先にだ!!」
「心得ております。」
「ならばさっさと行かぬか!早く全てを集めよ。我の復活のために・・・!」
「ですが、もう一人の人柱が見つからぬのです・・!これでは解除する事g「ならばその者と選ばれし者が集う時に殺めれば良かろう!!」
「分かりました、ではその通りにいたします・・・。」
私達は紅月様に全てをささげた。刃向かう者共は全員殺めよう。たとえ家族や友人、愛人だったとしてもだ。
――――――――――――――――――――
「君には大切な人はいないのか・・・。」
「な、何だよ急に!」
「ふと思っただけだ・・・君はよくこんな所で一日中僕の監視をしていられるな・・。」
「紅月様の命だしよ。それに飯は闇の住人ども(雑魚)が運んで来るしよ。」
「君は、僕が見た限り、僕が入れられた時からずっといるんだろう、ここに」
「あぁ、居るさ。別に外に出なくたって生きてけるしよ。はじめの頃は、外に行ってた事もあったけどよ。
当時の俺は入りたての青二才みてぇな奴だったしよ。まぁ、紅月様から牢屋の番を請け負った時は凄く嬉しかったぜ?」
正直あんたが自分から紅月様の力を開放してくれるとは思いもしなかったけどよ。そう言いにやっと笑う。
「ねぇ、人柱の人?」
「その呼び方はやめろ。」
「入ったときはずいぶん牢屋のそこかしこで何か企んでたみてぇだけどよ。今じゃすっかり大人しくなっちまって。さすが、学習が早いな。それが究極生命体って所か。」
「この牢はどうやら防御魔法で開きそうにないしな。破壊したとしても、このかせを外さなければ出ても意味はないだろう。」
「その通りだよ。全く。今更そんな答えが返って来るとは思っても見なかったけどねぇ・・・。」
その枷は特殊な金属でできている。ちょっとやそっとの力で壊れる事はないのだよ。この牢屋の格子もそうだ。さらに、この牢は出口がない。出るには誰かの力が必要。その上、防御魔法がかかっているから魔法を解かなくてはいけない。牢屋の中では魔法は使うことができない。つまり、ここから一人で出る事は不可能に近い。手助けをする仲間が必要だ。
「まぁ、この魔法を解くのも高度な技術が必要ってわけ。これも大きく言ってしまえば、あのウォイス・アイラスを誘き出す罠って訳ね。
あんたにいわせちゃあ、こんな屈辱はないよなwwもう一人の奴よりも先に解かれちまうし、捕まってあの、『永遠の魔導士』を誘き出す餌にされるとは可哀想だよ全くwwあんたがどんだけ傷ついたか」
「それが君達の手だろう。僕にもう一人のなを吐き出せと。」
「それもあるけどww」
キシシ、と彼は笑って地下から出て行った。
久しぶりに外でも見に行ったのだろうか。僕も見たい。久しぶりに。
――――――――――――――――――――
第三十二章〜泡沫〜
紅月達の襲撃から三日が経った。未だにスパークが目覚める気配がない。
今もこうして代わる代わる見てるけど、たまに苦しそうに顔をしかめて唸るだけだ。ウォイスさん達はもう旅立って、屋敷には僕達とミルフィーユさんしか居ない。
今日も目を覚ます事も無く夜が明けて行った。
「お父さん。」
「どうしたよスパーク。また泣かされたのか?」
「うん」
「泣いたらせっかくの良い顔が台無しだぜ?折角俺に似ていい男なんだからよ」
そう言って頭を撫でられる。
「やだ。お父さんよりお母さんの方が嬉しい。」
そう言ってまた一つ二つと雫が零れた。
「だからな、そう泣いてるとまた揶揄(からか)われるんだぜ?」
全く、だれに似たんだかなぁ。と言って、スパークを肩車する。
「高いだろ?今のお前、父さんより高いんだぞ。」
そう言って笑う。
「お父さんよりも?」
「あぁ、お前はいつ、父さんをこすかな。スパーク、辛いのは今だけだ。いつかはこんな事もあったって笑える日が来るさ。」
「・・・・・うん。」
「そういや今日な、ガナールがくるんだぜ。折角だし何か魔法で出してもらおうぜ、彼奴は色んなとこに言ってるから異国とかの面白い話しも聞けるかもな。」
そう言ってスペードは笑った。
「僕、兎さん出してもらいたい!!」
「へぇ、何でだ?」
「兎さん捕まえられないから。じっくりと見てみたいんだ!!」
「そうか、良いと思うぜ。出してもらえよ。」
「うん!!」
スペードは笑った自分に再び笑いかけて、スパークの足を地につけた。
「んじゃあ、うちまで競争って事でな」
そう言って自分を置いて走ってゆく。
「まって!!」
追いかけても父親の背は遠くなるばかり、あれ、こんなにうちまで遠かったっけ。立ち止まって辺りを見回せば、見た事の無い真っ黒な世界。
「お父さん・・・?どこ?」
歩こうとしたら、足元の黒い草が絡み付いて来て歩けない。そのまま転んで、そのまま沈みこんで、黒いドロドロから手を挙げたら顔に黒い糸みたいなのがかかった。
「・・・・!!」
ついには半分以上が沈んで、そしたら視界の先に、お母さんとお父さんが見えた。ちょっと若いみたい。
お母さんは、裾が長いお洋服着てる。お父さんはいつも通り、何も着てなくて、窓から綺麗なお月様が顔をのぞかせていたよ。お月様の下にはおっきな水たまりが広がってて、水面が絶え間なく揺れてる。
これがお父さんが言ってた“うみ”って所かな。凄いおっきくて綺麗だね。
あれ?お父さん、袋から何か取り出してお母さんに見せてる。見た事あるよ。月の光を浴びて光り輝く宝石。
「カオスエメラド・・・・。」
僕も見せてよ。もっと近くで見たいよ。お父さん。聞こえないの?ねぇ、
黒いドロドロの中で必死にもがいて手を伸ばすけど、おとうさん、気がつかないみたいで、お母さんと笑ってる。僕もその中に入れて・・・ねぇ。もう目の前が真っ暗になって、届かないと知っても尚もがいた。
次第に意識が遠のいて、自分の耳には聞き覚えのある二人の笑い声だけが木霊した。
「うわあぁぁぁ!!」
「うわあっ!!何でもするから!寝かせろぉっ!・・・・・・て、スパーク、目覚めたのか。」
俺の足元にあったイスに座って寝てたらしいステアが飛び上がる。その手には何故かシュークリームが。
はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・
今の何だ?夢・・・?改めて辺りを見回す。
鮮やかな装飾が施された部屋。部屋の中心には丸いテーブルがあり、当然のごとくテーブルクロスがしいてあった。その上に小さな籠に入ったリンゴが積み上げてあった。寝てた俺の脇には小さな棚があって、その上にスタンドが置いてあったが今は点いてない。窓の向こうには城が見える事からかなり高い所なんだろうか。
「お前、久しぶりに見たぜ。あの日からもう一週間目を醒さなかったしな。俺らもいい加減この街に飽きて来た所だぜ。とりあえず他の奴らにも知らせてくっからよ。あんたはそこから一歩もでるなよ。」
言うなりステアは残ってたシュークリーム二つを両手に、口に一つ放り込んでドアを閉めて出て行った。廊下から盛大な音が響き渡った事はこの際気にしないようにしようか。
ステアが居なくなってから外を見る。きっと外は賑やかで、いつも通り店の人たちの大きな声が響いているのだろう。
バスッとベットの上で鈍い音がして手元を見たらバスケットが落ちていた。
「なんだこれ。」
「あ、わりぃわりぃ、落としちまってよ。それ返してくんねぇか?」
上を見上げると通気口から黒毛に赤いメッシュの入ったオオカミが笑って手を伸ばしていた。
「あんたは?」
「あ、おれ?俺はギイってんだ。ちょうど良かったお前、スパークって奴が寝てるとこ知らねぇか?」
「俺だけど。」
「へぇ、あんたがか」
そいつは通気口からすとんとベッドの上に降りて来て、俺を舐めるように見た。今になって気がついたが、そいつの左腕は、鉄のように銀光りしていた。というか鉄なんだろうが・・・。
「俺が思ってたのよりちっせーな。いくつだおめぇ」
「14・・・・・って何だよあんた。いきなり!!」
「なんだ、俺より十三も下じゃねぇか、まだまだくそガキだなおいwww」
そう言ってベッドの上から飛び降りる。
「そいつは俺の主が迷惑かけたって事で、受け取ってくれよ。わざわざ敵地に乗り込んでまでそれ渡しにきたんだからよ。」
そう言って、持っていたバスケットを指差す。主ってまさか・・・。
「お前、紅月のっ!!」
がばっと立ち上がるが、ベッドの上でバランスを崩してその場にへたり込んだ。
「おいおい、誤解すんなって。俺は人様のうちを荒らしにきた訳じゃないし、戦う気もねぇ。俺今日は公休って奴でよ、別に主に頼まれた訳じゃねぇ。気分だ気分。それに、選ばれし者ってぇ―のを見てみたかったしよ。」
そう言って窓まで下がる。
「まぁ、ここまで来るのにちょいと手荒な事しちまったけどよ。」
そう言って窓をガララと開け放ち、下を見る。外からは、聞き覚えのある声と、剣と剣がぶつかり合うような物音が聞こえて来た。
「何したんだっ!!」
「大丈夫さ、俺がだせるのは低級魔物、いわゆる悪魔とか亡霊の類だけさ。なにも生き物に影響を与えるようなのはほとんどだせねぇよ。最近この街で練習してたんだけど、ちっとも言う事聞かなくてな、昨日やっと言う事聞いたんだぜ。」
そう言ってやれやれとでも言うかのように肩をすくめた。
「おまえっ・・・・」
そう言って手に力を集中させる。すると辺りは夜のように暗くなり、繁華街は静寂に包まれた。
「お、おいおい、こんな所でそんな大技出したら辺り一面焼け野原だぜ?あんた分かってんのか?雷の威力。」
やめとけよ。そう言われて力をためるのをやめた。
「むやみに使うのはよせよ。そうそう、そのバスケットの中に入ってる花」
「これか?」
そう言ってバスケットの布を取って赤い花を取り出す。
「それ、アファレイドで摘んできたんだ。なんつったっけな・・・あ、赤い月光花。王宮から三本くらいもらって来た奴さ。摘んだ時はまだ咲いてなかったんだけどよ、今は赤い花が開きかけてるだろ?それに注意しろよってーな。まぁ、バスケットの中身自体は市販のだからよ、悪いもんは入れてねぇさ。」
「?これなんだ。」
バスケットの果物に隠れて見えなかったけど、一冊の本が入っていた
「あーそれか、何でもアファレイドの魔法指南書らしいぜ 。うちにあったんだけどよ、俺つかわねぇし、魔法使えねーし。連れの青い奴にどうかと思ってなww」
そう言って、窓のふちに足をかける。青い奴って・・・シャオンか・・・?
「あんた、何でこんな事すんだ?」
「ん、何でってお前。俺は気分で動くのさ。んじゃな。今度あうときはお互い敵同士だかんな。あと、この事は誰にも秘密だかんな」
そう言ってあいつは窓から飛び降りた。しかし、ぶつかるような音はしなかったので、死ぬ事は無かったのだろう。それと入れ替わりにシャオン達が入って来た。
「もうびっくりしたんだよ、さっきステアが来た瞬間に黒い変なのが来てさ。やっとさっき消滅したんだよ。」
「そうなのか!?」
シャオンは部屋入るなりそう言った。
やっぱり彼奴が言った事は嘘じゃなかった事を改めて理解した。
「そんな事よりスパーク大丈夫なの?あんた動ける?」
「うおっ!!ここにバスケットがあるぜ!!何入ってんだ?」
「あ、あぁその中にはな・・・・」
「あれぇ、おかしいよねこれ、僕達がいた時にこんなの無かったもん。ステアも見てないんだよねぇ、つまり僕達全員が下にいる時に誰かが持って来たって事でしょスパーク?」
「あぁ、宅急便で・・・。宛名は無かったけどよ」
「おぉ!!リンゴじゃん食べよーぜ!!俺腹へってんだ!!」
ステアはバスケットのリンゴを持って俺に詰め寄って来た。
「あんた、さっきもシュークリーム食べてたじゃない。まだ食べるの!?」
「さっき動いたからまた腹減ったんだよっ!!」
「あんたは食べ過ぎ!!スパーク優先!!」
そう言ってサファリがステアからリンゴを奪い取る。そしてリンゴを剥こうと果物ナイフを取り出す。
「いいよサファリ、僕がやるよ。君がやると食べる部分がほとんど無くなっちゃうからさ。」
「うるさいわねっ!!」
そう言ってシャオンがサファリから取り上げて剥き始める。
「シャオン、お前そのポーチ何処で買ったんだ?」
「ウォイスさんがくれたの。小ちゃいんだけどいっぱい入ってさ、まるで四◯元ポケットだよ」
俺が聞くとそう答えつつも皮を剥いていくシャオン。器用だと思った。
「じゃあこれらも入れてくれよ。」
そう言ってバスケットと本を指差す。
「うんいいよ。」
そう言ってリンゴを手渡す。そうして一段落ついから、シャオンがテーブルの上に地図を広げ、その周りに四人で集まった。
「次に向かうなら樹氷の森がいいかな、って思うんだけど」
「何でだよ、そのまま山超えればいいだろ?」
ステアはそう言って指でアファレイドまでをまっすぐになぞる。
「それが難しいから言っているんでしょ!この時期だし、標高が高い山々を超えるのは無理に近いわよ。」
「サファリが言うのもあるよ。それにね、僕が思うに、遠回りをして樹氷の森に行けば、そのあとに瑠璃の森、アファレイド魔道王国と順序よく三つが集められるんだよ。」
「あ、それにいく先々に山小屋とかありそうだしな。」
「うん。正直まっすぐは無謀だよ。よほど強い魔法使いとかいなくちゃね。」
「えー、まっすぐの方がいいと思うんだけどなぁ俺。」
「それ、夏だったからじゃないの?」
「いや、春だった。」
誰もそんな事聞いてないと思うんですけど。
「んじゃあとりあえず、明後日までに準備してこの街を出ようぜ!俺も復活したし。」
「おいしい食べ物いっぱい食べたし。」
「カオスエメラルドももらったし。」
「いやでも、俺まだここにいたいんだけd「「「だめ。」」」
そんなこんなで、俺達は予告通りに其の明後日にここ、食の街テュリネイトタウンを出たのであった。
にしても、あの夢は一体なんだったのだろうか。あの海が見えるあの街は一体。
NEXT→ No.13
あとがき
お久です。どうも。
本編出すの遅すぎて泣けて来ますよね。はい。ポルさんの方が量多いってどういう事だよっておいって言うww
やっと13書けますわwwwこの次も頑張って行こうと思います。
ギイ・ザ・ウルフは、紅鴉様よりお借りしました。
v
図書館 2/2
「お体の具合はいかがですか、リーヤさん。」
「大丈夫ですよ。いつもすみませんねぇ、本を持って来てくださって。」
「いえ、昔は私が貴方にお世話になりましたので、これ位は。」
そう言って、彼女の差し出した本を受け取り、別の本を差し出す。
「この本でよろしいでしょうか。題名はこれでいいのですよね」
「ありがとうございます。私も動けなくなってしまっては寿命が近いのでしょうかねぇ。」
「縁起でもないことを言わないでください。貴方には長生きしていただかなければ困ります。」
そう言ってもらえるだけでも嬉しいですよ。そう言って彼女は笑った。
「また三日後に、よろしくお願いします。」
「はい。」
私は、週に二回程、このリーヤさんという方の元へ本を届ける事が日課になってます。特に理由はないのですが、私が昔お世話になってた方ですし、図書館の常連さんでもあったので、それもあって私が足を運んで届けています。
「明日はこの本を書庫にもどさなくては行けませんね。」
片手に回収した本を抱え、帰路へついた。
そう言えば今日はウォイスと約束がありましたね。気がついたのは、自宅に着いてからでした。仕方ないので、本をテーブルに置き、夕食の下ごしらえをして再び家をでました。
もう町にはランプが灯り始めており、空は真っ暗だった。私はこの幻想的な風景が好きです。理由は分かりません。
指定した場所に行くと、ウォイスさんは腕を組んで待っていました。待ちくたびれた様子で周りを見回し、私の姿を見つけると歩み寄ってきました。
「お前の見まいは一体何時間かかるんだ。少なくとも三時間は待ったぞ。」
「そんなに私に言いたい用事だったのですか。でしたらお昼に伝書兎を寄越さないで自分でいらしてくださればよろしかったのに。」
「あぁ、ラヌメットの事か、昼は少し野暮用があってな、机から離れられなかった。」
「そうですか。では、その大切な用事とは何なのでしょうか。」
「おまえは総合分野の教師ながら、魔法薬学が突飛して得意だそうだな。」
「だから何ですか。」
「聞いても良いか?不死の薬を解毒する薬はあるのか?」
「はい?」
突如聞かれた。危険な要素たっぷりの言葉に驚いて、不本意ながら聞き返してしまいました。
「何故、そのようなものが必要なのでしょうか。それよりも、永遠の魔導士と呼ばれしあなた様が知らないものもあるのですね。」
「お前のその皮肉たっぷりは口調はどうにかならないのか。」
「先に質問に答えるべきは貴方です。何故でしょうか。」
「特に無い。ふと思ってみただけだ。」
「そうですか、頼む人は皆、理由があるからそれを聞こうとするのです。貴方のように、理由が無い人程おかしな人は居ません。しかしそれもまた理由の一つなのです。それで、私は元からこう言う口ですので別に意識してる訳ではないのです。」
「そうか、ではあると言えばあるのか。」
「えぇありますよ。ですが、その書物の在処は分かりません。図書館内にはあるかと思われますが、禁書のフロアの最深部に入れられてるとも言われてますし、封印されてるとも言われてます。」
この図書館内にはいくつかのフロアがあります。
まずは一階が魔法(初等部向け)や娯楽などの本。二階には中高等部向けの本と、ずっと奥に禁書(持ち出し禁止の本)があります。もちろん、この階のは読む事に差し支えが無いものです。
三階からは限られた人物。王宮の者、宮廷魔導士などのみが出入りできるフロアです。
内容は、こちらも禁書(王宮の者のみが覚える事が可能な特別な魔術など)が入ってます。確か、黒魔法の記述の本も五棚程度ありましたかね・・・。
最上階となっている四階には、私が言った通りアファレイドで法的に禁止されている魔法魔術書の保管庫となっています。
そして、その最深部というのが私のカウンターの所から行けるいわゆる秘密の花園なのです。私はそこの鍵を預かってはいますが、まだ行った事はありません。非常時以外そんな事許されませんしね。
「まぁ、名前はちらっと本で読んだ事はありますね。ただ、作成の仕方は不明でしたけど。」
「そうか。」
「もしかして、何かする気でしたか?あれはこの国で禁止されている薬生成法でもあります。不老不死の薬が高等部で見る事ができるのは異様ですがね。」
「別に何かする気はない。ただ、この国にもあるのかと思ってな。」
「まぁ、その本自体は昔あったと言われるレヴィアーデンのふるい本だそうですが。」
そう言ったい彼に目を向けると、彼は目を見開いた。
「そうか、今日は夜分遅くに呼び出してすまなかったな。」
「いえ、まぁ本当はこの時間なら夕食を食べていた頃なのでしたがね。あと、ラヌメットさんに言っておいてください。」
「なにをだ?」
「期限切れの王子へ貸し出した本を、早く返してください。と」
そう言って私は、彼の答えを聞かずにその場を立ち去りました。せっかくですから明日は久しぶりに教壇に立ってみましょうかね。
翌日、私は久しぶりに一日中学校に居ました。いつも静かな図書館と違って賑やかでしたが、授業も真剣に聴いてくれたので良かったです。
あれから数年が経ちました。
ラヌメットさんは、見事卒業試験に合格し、証書を私に見せにきました。やはり体は他の皆より小さいのですが私にはそれが、昔の私に見えました。
その数日前に、王子のラネリウス様が王へと即位したのでした。これを機に、ウォイスはこの教師を辞めて、宮廷魔導士一本で行くつもりらしい。それと、ラヌメットを宮廷魔導士へと育てるために弟子にするのだとか。
せっかくなので、私もこれを機に教壇に立とうかと思い、年度最初の職員会議で図書の管理をやめる事を職員全員に言いました。
その次の日の夕方でしたかね。
リーヤさんが亡くなりましたのは・・・・・
突然の事で、私も驚いてしまいました。私が駆けつけた時はもうすっかり冷たくなっていましてね。声を掛けても、体を揺すっても彼女は目を覚ます事は無かったのです。
仕方が無い事ではありましたが、悲しかったのです。いきものを生き返らせる事はこの世の中でもタブーでありました。
その数年後には、王様と王妃様の間にお姫様が誕生しました。
当時は皆がそれを祝福しました。我が校もその間はお姫様の話題で持ち切りでしたからね。
そして、その数年後、お姫様が亡くなった時にも皆が悲しみました。数年後、王妃様の死と引き換えに、跡継ぎとなられる王子様がお生まれになられました。そして、その時期になって、ラヌメット様が私の元を尋ねて来ました。
「もう、図書館にいなかった時はびっくりしましたよ」
そう言って手に持っていた紙を私に見せて来ました。
「此れは・・・・」
「見ての通り、宮廷魔導士の証明書です!!これで、四階に上がれるようになります!!」
「そうではありません。貴方の胸ポケットに入ってらっしゃるその写真です。ついに貴方にも愛人ができましたか?」
「ちがうよ。やっぱり先生は証書なんか目にも入らないんですね。卒業した時もそうでしたもの。」
そう言って笑う。私が顔をしかめると、彼はハッとして胸ポケットからその写真を取り出した。
「これは・・・・?」
その写真には、小さな男の子が映り込んでいた。
「これが王子様です」
「この方が・・・ですか?」
「はい、目に入れても痛くないとはこまさにこの事ですよウォイス様とかもうメロメロで、この前なんか『どうだ王子は』とか、聞いてきたんですよ」
ご丁寧にも、ウォイスの声を真似していう。
「そうですか、良かったですね。」
「・・・・・・・!!」
すると、ウォイスから声がかかり、彼は一礼して駈けてゆく。
こんなに嬉しい物でしたかね、教え子の成長というのは、そんな事をふと思いつつ、下がった眼鏡を押し上げて次のページをめくった。