黒の国〜影の森〜

誰しもハッピーエンドな訳は無いのだから。バッドエンドはすぐ其処まで来ている。

長編オリソニ小説 〜永久の月光花〜No.13

  • これは、別のサイト「動くメモ帳」にて公開中の長編オリソニ漫画の小説版です!
  • 漫画とは少し表現が変わっていたり、会話文等が少し変更されている箇所もありますが、基本ストーリーは一緒です!
  • まだまだ漫画は始まったばかりなので、続きの話が出来次第二巻、三巻、と更新して行こうと思っております。
  •  尚、二巻から先は書き下ろしになりますので、pixivの方には出しておりませんのでご注意ください
  •  誤字、脱字等がございましたら言ってください。 

 

この小説を読む際のご注意


・この小説は、あくまで私のオリソニ、を中心としたオリジナル小説です。
・この小説と、ほかのサイトにうPした漫画をセットで読んでいただくと、また面白いと思います。
・この物語の舞台は、ソニック達がいた、100年後の世界です。
それをご了承の上でお読みください。OKな方のみどうぞ

 

 

 

 

 

第三十三章〜廃都〜

 

テュリネイトを立ってから三日が経過した。未だに景色は変わる事も無く、鬱蒼と茂る針葉樹の木々がザワザワと不気味に揺れている。更に寒い。

ただ一つ、違っていたのはテュリネイトを立ってから、だんだんとカオスエメラルドの輝きが増して来ているように見える。近くにカオスエメラルドがあるとでも言うのだろうか・・・・。

「あ、また光ったよ。」

そう言って、前を行く三人に話しかけたが、誰も反応はしてくれなかった。最初のうちはみんな反応してくれたんだけど・・・・。

もう三日もこの景色が変わらない森を歩いているのだ。皆いい加減飽きて来たんだな。と僕は思った。

もともとこの道は宗教都であったアポトスへ通じる道だったらしい。しかもそこにはカオスエメラルドもあったらしいけどある事件でそこが消えてからずっと行方不明。

 

「もしかしたら彼処でも見つかるのかなぁ・・・?」

ぽつりと呟いた僕にスパークが反応した。

「何がだよ」

「え、カオスエメラルド。」

「まだ先なんだろ?そこまでは、あーあ、誰でもいいから会いたいぜ。」

「俺リンゴ以外のものが喰いてぇ」

「あたし、ちゃんとしたとこで寝たい」

そう言って三人一斉にため息をついた。

 

「僕何でも良いんだけどなぁ・・・見覚えあるんだよこの道・・・。」

僕は何でも良いんだ。自分の記憶の手がかりになるものなら・・・。

「ん・・・?」

急にステアが立ち止まって辺りを見回した。一カ所に焦点が定まる。

「俺・・・急用思い出したわ。ちょっと先行っててくれよ」

そう言って僕らの返事も待たずに茂みの向こうに駈けて行った。

「何だ、彼奴急に・・・・」

「どうせまた食べ物でも見つけたんでしょ。彼奴の言う通り、先に行きましょう」

どうも僕にはそう思えなかったんだけどなぁ・・・。あの目はいつもの獲物を見つめるような目じゃないと思ったんだけど・・・

「ほらシャオン、早くっ!!」

「あ、うん」

気がついてサファリ達の方を見ると、かなりの距離が開いていた。僕はあわてて二人の後を追いかけた。

 

ステアが抜けてから何時間がたったか分からないけど僕達は、歩いて行くうちに開けた所へ出た。時刻はもう夕暮れ時、しかも高山だからか、きりが出て来て、視界はあまりよろしくはなかった。

「今日はここで泊まろうよ、広いから見通しがいいし。」

 

谷川の道に木は生えていなくて、ふもとの家々の明かりがぽつりぽつりとつき始めていた。

 

「なぁここ、かすれてて読みにくいんだけどよ、「アポトス」って書いてあるぜ」

「あ、本当ね、石の壁にアポトスって・・・・というかあんた読めたんだ。あんな字が汚いのに」

「失礼だなお前!!」

「え、アポトス・・・?」

二人は石の壁をジッと睨んでいた。僕も行ってみたけど、やっぱりアポトスって書いてあった。

「って事は、どこかに入り口があるんだよね・・・」

僕達は一斉に周りを見渡した。もう暗くてほとんど周りは見えなかった。

「あ、あった!!!」

サファリが急に叫んで駈けて行った。彼女は元から白いので少ない光でも反射してよく分かったから追いかけたんだけど、途中でスパークにぶつかって尻餅をついた。

「って―な、いきなりぶつかるなよ」

「キミは元から黒っぽいんだから気をつけてほしいよ」

口々に言い合った後、今度はぶつからないように僕がスパークの手を引いてサファリの後を追いかけた。

 

追いかけて行くと、サファリは大きな橋の前で立ち止まっていた。

「どうしたの、サファリ?」

「今日ここに泊まらない?何かいいよね、若干ぼろい感じが!スケッチによさそう」

そう言って僕達二人に目を向けた。満面の笑みで・・・。

「俺はいいけど・・別に寝るだけだし。」

「僕も同じく」

・・・というか、他にちゃんと寝れるような所が無かったって話なんだけど。後から僕達二人で各家々を見回った所、ベッドの中身がはみ出ている家や、床に穴が空いている家、酷い所は家の土台しかなかった。しかもそれは、この大きな建物を中心に被害が拡大している事が分かった。

 

 

「おじゃましまーす・・・・・誰かいませんよねー?」

ガチャリ、と大きな音をあたりに響かせて扉を開け、サファリが中を確認して、足を踏み入れた。大丈夫だったようで、僕達も続いてはいった。

中は広かった。所々修理されている所があったけど、別に気には止めなかった。

後方で、ガチャリと大きな音を立てて扉が閉まった。

僕達は気にせず、とりあえずこの大きな建物の中を散策して回る事にした。

 

 

 

「お前ら、こんな所で何をやっている。」

其の声は、二階の広間のような所来た時に聞こえた。

「誰だ!!」

周囲を見回すが、声の主は見当たらなかった。

「それは俺が聞きたい所だ。観光目的で泊まられるのは御免だ。出て行ってもらおうか」

そこでようやく僕達は、声の主が上にいる事に気がついた。そいつは月明かりの漏れる穴の開いた天井に腰を下ろしていた。

「とりあえず聞かせてもらおうか、何故この場所へ来た?お前らは何者だ?」

「僕達は、樹氷の森まで旅をしているんだ。其の道中でここに立ち寄ったんだ。」

「それじゃあだめだな。皆そう言ってここへ上がり込む。汚らわしい。この神聖な場所にそんな偽りを言う輩は俺が全て排除した。お前らの本当の目的は何だ?」

答え次第では殺す。そう言って声の主は黙った。

 

「俺は、よく分かんねぇけど、ある使命でカオスエメラルドを集めているんだ。その道中でここに立ち寄った。証拠なら・・・ほらっ、ここにあるぜ」

そう言ってシャオンが持ってた鞄の中から青いカオスエメラルドを取り出し見せつける。カオスエメラルドは辺りを青白く照らし出した。

 

「・・・・なるほど、ウォイスがくれたようだな其の鞄は、つまりお前は選ばれし者・・・か。すまなかったな。」

そう言って声の主は地面に降り立つ。カシャンと金属同士がぶつかる音が響いた。

「ちょっと持っていろ、今明かりをつける。」

主の足音が遠ざかり、数分。ボッと言う音を立てて両脇の蝋燭に順番に灯が灯ってゆく。俺達はあまりの明るさに目を瞬(しばたた)かせた。改めて光のある生活がどんなに裕福なのかが分かった。

 

「客人など久しぶりでな。ここ数十年光を点けた事はなかった。」

そう言って奥から出て来た彼も、黒いヘッドバンド(?)で両目を覆っていた。背中にはジャケットと同化していて気がつかなかったが、羽が生えていた。赤い毛は、後で束ねられており、腰くらいまであった。

 

「数十年って・・・お前いくつなんだよ」

「知らない。しばらく観光目的の輩は排除してたからな。ちゃんと人を泊めたのはかなり昔だ。」

そいつはまだ慣れないようで、黒いヘッドバンドをしたまま俺の前まできて答える。

「名乗るのが遅れた、俺はアッシュだ。アポトス崩壊後、否それ以前からずっとここで暮らしている。」

そう言って外の方を見つめる。本人は見えていないのだろうが。

「俺はスパーク。んで、こっちの猫がサファリ。んで、こっちが—」

「シャオンって言うんだ。」

俺の言葉を遮ってシャオンが自ら答えた。

 

「!?シャッ!!」

アッシュは、シャオンが名乗ると驚いたように口を開き、慌てたように黒いバンドを目から外した。

「お前は・・・・?!」

アッシュはシャオンの真正面まできて、目を見つめる。シャオンはそれが不思議だとでも言うかのように首を傾げて「どうしたの?」と言った。

「否、何でも無い。部屋に案内するからついて来い。」

 

アッシュは左目にかかった前髪を搔き上げて先頭を歩いて闇の中へ消えて行った。

 

通された部屋は、客間だった。天井や壁の所々穴があいていたりしたが、気にするなとアッシュは言った。これでも修理はしたらしい。ベッドに転がったが、凄く寝心地が良かった。

「自由に使っていいからな。ただし、穴はあけるなよ。」

「分かってるよ。そんな事はしないよ僕達。」

シャオンはそう言って荷物をベッドの脇に置いた。

 

「分かってはいるがな。あとスパーク。お前に話がある。支度が終わってからでいい、後で上まで来い。」

「え、お、おぅ」

スパークが返事をすると満足げに微笑み、扉を閉めて出て行った。

 

「上って。もうここより上の階はなかったよな」

「きっとあの屋根の上なんじゃない?ほら、アタシ達を迎えたとこ。」

サファリはそう言いながら、鞄の中から画板を取り出す。

「なぁシャオン。ステアッて何処行ったんだろうな?ちっとも来る気配がねぇし・・・・・」

「・・・・・・・・」

「シャオン・・・?」

隣を見ると、シャオンはもう小さな寝息を立てて寝ていた。

「きっと疲れたのよ。スパークも支度すんだなら行った方がいいんじゃない?」

「んじゃあ行って来るな。」

「はーい。」

こうして俺は部屋をあとにした。

 

 

第三十四章〜主の思考〜

 

 

「意外と早かったな。」

屋根の上で月を見ていたアッシュは俺に気がつき降りて来た。場所を変えようと言って、そのままもともと広場だったのだろう場所まで出る。

「ここはもともと宗教都だった。更にそこでエメラルドも守っていた。其の事から観光客も絶えなかったんだ。ある年、アポトスでカオスエメラルドを公開した時期に事件が起こった。それが通称アポトスの悲劇。この惨事でこの都と客として来ていた約五千人と街の人々のべ一万五八千六百人もの人が亡くなった。」

「それが、アポトスの悲劇。」

「そうだ。そして、カオスエメラルドも奪われた。主犯は紅月の賛同団体かと思われる。俺は、其の紅月について、お前に教えなくていはならない。そして、シャオンの事についても」

「シャオン。お前、彼奴を知ってるのか!!」

「知ってはいる、だがしかし教えるのではなく、本人自らが思い出さなくては意味が無いと思っている。」

そう言って空を見上げる。

 

「単刀直入に言うがシャオンは、この時代にいてはいけない存在だ。歴史上、この時代にいるはずの無い人物なのだ。」

「どういうことだよ。俺にも分かりやすく言ってくれ。」

「つまり、この世界にいるはずの無い人物って事だ。俺の知っているシャオンは、この世界のシャオンとは違う。きっと、彼奴が全てを思い出した時、お前の知っているシャオンとは明らかに違う奴になるはずなんだ。」

「つまりあんたが言いたいのは、シャオンが全てを思い出すと、俺達が知ってるシャオンとが違うシャオンに、つまり、あんたが知っている元のシャオンに戻る訳なのか。」

「そう言う事だ。シャオンは紅月と接点があった。俺はそれを知っている。彼奴は紅月を・・・・・ラヌメットを庇おうとした。彼奴を最後まで信じて封印に細工までしてな。」

ラヌメットはおそらく紅月の本当の名なのだろう。明らかにアッシュの顔つきが変わったのは明白だった。

 

「そのせいであいつは・・・・自分から引きずり込まれたんだ。この時の流れに。ラヌメットとは幼なじみだった。彼奴は優しくて親切で、あんな事をするような奴じゃなかった。何処で道を間違えたのか、あいつは黒魔法に魅了されて行った。そして彼奴は、王を殺した。」

「紅月の始罪・・・か、それが」

「よく知っているな、お前があのスペードの息子とは思えない。そのあと、王宮から王子を連れ出して逃げたのは当時、もう一人の宮廷魔導士だった男だ。ラヌメットも巻き込まれたんだ、この時の流れに。彼奴は権力のために力を振るうような奴じゃなかった。そんな事はしようともしなかった。」

「でもよ、主犯は紅月なんだろ?」

「まぁな、しかし俺はどうしても信じられないんだ。彼奴が何故あんな事をするのかが・・・

すまなかったな、もう返っていい。疲れただろうに悪かったな。」

そう言ってアッシュは俺の返事を待たずに飛んで行った。仕方ないので俺はひとまずベッドに入って今夜の出来事を整理する事にした。シャオンの事は、本人には言わない方がいいのだろうか・・・思いつつ、俺は元への道を引き返した。

 

 

 

 

「ねえエノ、あそこの扉の中にある部品取ってもらえるかな」

「いいですがDr.貴方は何をなさるおつもりで?」

「久しぶりに機械いじりでもして見ようかなって思ってさ。」

そう言って研究所脇にあった工具箱を机の上に置く。ここはアファレイド王宮内の研究施設。一面鉛の色をした金属でタイルばりになっているため、足音だけでもかなり響く。

「これでしょうか?」

「それですそれです。せっかくだからエノもいっしょにやりましょうよ。」

「いえ、私はサポートに回ります。」

「そう・・・?」

カシャリと置かれた部品には「ティルト」と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

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一人は言う、「戦いなど虚しいだけ』 一人は言う、「僕を一人にしないで』 一人は言う、「人それぞれで良いのだ』 一人は言う、「片方を守る者、もう片方を失う」 四人は言う、「この物語を作るのは自分たち自身なのだ。』と、 だから僕は守る、彼女に頼まれたあの子と、この世界の運命を・・・・・・・・