黒の国〜影の森〜

誰しもハッピーエンドな訳は無いのだから。バッドエンドはすぐ其処まで来ている。

スパークの過去〜小説〜 後編

 

 

第六章~False charge~

 

 

 

スパークの意識が薄れたその頃、神殿一帯が、光に飲み込まれた。

父親のスペードは勿論、その側にいたソシア、サファリも巻き込まれた。

 

「ううっ・・・・・・」

 

気がつけば、元居た神殿だった。

ふと周りを見渡せば、周りにはスペードとソシア、スパークが倒れていた。

三人とも自分より酷い怪我で、意識が無いようだった。

そこで気付いた、自分が一番怪我が少なかったのだと、とりあえず、一番近くに居たソシアを揺り起こした。

「・・・・・此処は・・・・」

「神殿です。ソシアさん、これどういう事なのでしょうか・・・・・・・」

「分かりません。あ痛っ・・・・・・光に包まれて・・・・そこから先が・・・・・・」

 

ソシアは、頭を抑え考え込んだ。

「私もそこからよく覚えてないんですよ。」

「そうよね、貴方もきっとそうだと思ったわ。」

「あの子は危険かもね・・・・能力がしっかり操れてないわ・・・・・・」

ソシアは呟やいた。

「?誰ですかあの子って?」

「何でもないわ、気にしないでくださいね。」

「あ、はい」

 

「ソシア!!何があったんだ!」

「ルシアさん!!」

そこへ、ルシアがかけて来た。

ソシアの前を通り過ぎ、スパークの元へ駆け寄った。

「こんな事になる事はだいたい把握はしていた。」

そういい、スパークの素手に手袋をつける。

 

「これで、少しは能力が抑えられればいいのだが・・・・・・・」

 

「能力?」

サファリは首を傾げた。

「お前には気にするな。」

ルシアはそう言い、今度はスペードの元へ駆け寄る。

 

「ル・・・・シア・・・・」

「喋るな、止血が出来ない」

「悪い・・・・」

そう言うとスペードはまた黙った。

 

脈を確認し、息を確認し、傷口の手当をする。

「先ほどの戦いでの出血の量が多かったようだな・・・・・・・・ソシア、こいつを家まで運んでくれ、私はスパークを運ぶ」

「はい」

 

そう言い、ソシアは、負傷したスペードを担ぎ上げ、うちの方に駆け出した。

 

 

 

 

「馬鹿野郎・・・・・」

そうルシアは呟き、スパークを担ぎ上げ、連れて行った。

 

 

 

 第七章~The whisper from darkness 

 

 

それから二日後、スパークは目を覚ました。

しかし、スペードは、あの日以来、目を覚ます事はなかった。

 

死因は、争いのときの大量出血が原因だった。

 

[お邪魔しました]サファリは置き手紙をして、その事を家に報告しに帰った。

 

 

「あんたは最後まで馬鹿だった・・・・・・でも、その馬鹿な所が私は好きだったんだ。」

 

 

そう言いルシアは、彼の写真の前に彼の大好きな焼きそばを置き、空を見上げた。

 

 

 

 

 

「お前、今度はとうちゃん殺したんだってなぁwwww」

「ゲッ・・・マジかよっ!!」

「うっわ~ひでぇwwwww」

また彼奴らだ。

何で彼奴らいつも僕を・・・・

 

「今度は母ちゃんを殺したりしてwwwww」

「!!」

「あーあるかもな、こいつなら仕出かしかねない」

 

「っ・・・・・ふざけるなっ!!」

スパークは噛み付くように言う。

 

 

「べっつにぃ~ふざけてなんかねぇしぃ~」

「そうそう、あんたがするかもしれないと思って言っただけだよwwww」

「俺達に悪気なんてねぇし」

 

 

そう言い、百姓の息子達は笑った。

 

 

「い・・・・・いい加減にしろぉっ!!」

そう言うなりスパークは飛びかかった。

 

 

息子達はスパークに太刀打ちできる訳もなく、そのまま死んだ。

でも、この気持ちは晴れない、この心のもやもやは何なんだ・・・・・

 

すると・・・・・

 

『殺セ・・・・・力ヲ開放シロ・・・・・・・・・コノ村ヲ焼尽クセ・・・・』

 

「誰!!」

周りを見渡しても誰もいない・・・・

 

『我ハ紅月・・・・・世界ヲ作リ直ス者・・・・・』

「世界を・・・・・作り直す?何のために」

『コノクダラナイ世界ヲ作リ直ス・・・・・・消セ・・・・消スノダ・・・・・・』

『コノ村ヲ!!』

 

 

その瞬間、村全体が光に包まれた。

 

気がつけば、そこは村の中心だったはずなのに、すっかり変わり果てた姿になっていた。

 

石畳は焼け、中央に立っていた林檎の木は黒焦げの状態になっていた。

家屋は倒壊しており、木などで出来ていた所は灰になり、石以外は残っていなかった。

自分の前に転がっていた死骸は、見るも無惨な姿になっていた。

 

街を歩き回っていた人々は黒く焦げ、性別すら分からないような姿になっていた。

 

 

ぐるりとあたりを見渡し、思い出した。

「!!母さん!!」

そう言い、家があった所へ駆け出した。

 

 

もちろん、自分の家も中心部の家のような状態になっていた。

家の中の家具はほとんどが元が何だったのか、分からないような状態になっていた。

 

そしてその家具の下に、母らしき姿があった。

しかし、彼女はもうぴくりとも動かなかった。

 

 

百姓の息子達が言った通りだ。

僕は、父だけでなく、母親までも殺した。

 

「僕は生まれて来てはいけなかったの?」

 

思わず声に出して呟いた。

後から大きな悲しみとともに、大粒の雨が目から降り注いで来た。

 

何で泣くの? 泣いたって意味なんか無いのに・・・・

後から後から雨粒が降り注いで来る・・・・・ 

泣いたって慰めてくれる父の姿も、母の姿もない

 

全部僕が壊したんだ・・・・・

 

僕が・・・・全部・・・・・

 

 

 

 

 

そんなスパークの姿を、森の中からじいっと見ていた青年は、呟いた。

「あいつの命、俺が預かるよスペード」

 

そう言い、少年の元へ足を進めた。

 

 

 

 

終章~Carry a wish. ~

 

 

 

 

 

 

 

その後、スパークはソシアのいるロセプタル教会に足を運んだ。

 

 

悲しい悲劇があった半年後の事、アポトスの悲劇が起きた。

そして、スパークにも転機が訪れた。

 

 

 

「おいで」

 

 

ふいにさし出された手は握るべきなのか・・・・・

 

不安そうな顔で、ソシアを見つめる。

クスッ

彼は笑顔で差し出した手を引っ込める。

 

「大丈夫、君がこれから来る所は君みたいな子がいっぱいいるから」

「え・・・・・」

 

「おいで・・・・・怖くはない、怖くなんか無いから・・・・・」

 

再び手を伸ばす。

僕は戸惑いつつ、その手をしっかりと握った。

 

 

そして少年は僕を連れて教会をあとにした・・・・・

 

 

 

その後ろ姿を、頼もしげに見送る修道女の姿がありました。

 

傍らには、一人の魔導士の姿がありました。

「似てる・・・・な」

「はい」

「あの時のスペードさんに・・・・・」

「スペードのような子に育ってほしいですね。」

 

そう言い少年と手を引かれて歩く針鼠を、交互に見比べた。

 

「あぁ、彼奴の能力を開花させる事はあの少年には出来るはずだ」

「なぜなら」

「「スペードとともに暮らしたのだから」」

二人は声を揃えて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本編へ続く

        H.24.7.29.PM.1.05

             著・影森

一人は言う、「戦いなど虚しいだけ』 一人は言う、「僕を一人にしないで』 一人は言う、「人それぞれで良いのだ』 一人は言う、「片方を守る者、もう片方を失う」 四人は言う、「この物語を作るのは自分たち自身なのだ。』と、 だから僕は守る、彼女に頼まれたあの子と、この世界の運命を・・・・・・・・