スパークの過去〜小説〜 前編
昔々在る所に、幼い頃にひどい仕打ちを受けていた少年がいました。
その頃は、まだ誰も知らない。
その子が世界を救う事を・・・・・・・
これは幼い二人のお話・・・・・・
幼いながらも、悲しい運命を背負いながら、心を通わせた二人の出会いの話である・・・・・・
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歌うよ・・・・君だけに・・・・・・
おれは誓う・・・・・・お前だけを愛そう・・・・・・・
踊ろう・・・・二人だけで・・・・・・
不格好で良いから・・・・
一緒に踊ろう。
優しくて・・・・暖かい・・・・・・
あなたが好き・・・・・・
両親の反対を押し切って結婚した異種族のカップルには、
その後、彼等には子供が出来た。
異種族という壁を越えた。子供が・・・・・
ドジで泣き虫で心優しい少年
それに加えて母親に似て特殊能力を持っているようで、
村のなかで少年は軽蔑されていた。
でも、あの子はめげない
そこが素敵な所
とても笑顔が可愛い少年・・・・・・
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第一章〜Cry-baby boy 〜
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」
ある日スパークが泣きながら帰って来た。
「どうしたんだ?一体」
私は子供の頭を撫でながら答えを促す。
一方あの子はと言うと、しゃくり上げながら一向に泣き止む気配がない。
「おいおい、どうした。スパーク」
お昼を食べに戻って来ていた夫スペードが聞く
「ぐすん。あのね」
ようやく落ち着いたのか話し始めた。
「またからかわれたんだ。皆に[異種族は来んな!!俺らまで汚れる!!]って」
そう言ったと思ったらあの子ったらまた泣き出した。
この村に移住して三年、スパークがこうして泣いて帰ってくるのはいつもの事で、仕方のない事なのだ。
スパークは、猫の私ルシアと針鼠の夫のスペードという異種族の間に生まれた子供、だから村の者から差別を受ける事はよくあるのだ。
それに、この子には特殊能力がある。それが更にあの子への差別を悪化さしているんだろう。
それが判明したのは二年前の事、スパークが一才の時の話。
突然村全体が大規模な停電に陥(おちい)ったことがあった。
そんな時、あの子がブレーカーに触った。
すると突如、村全体に明かりが戻ったのだ。
そしてあの子は疲れきって床に倒れこんだ。
その直後にあの子に触れたら、バチッと静電気が起きた。
私たちは顔を見合わせて、頷いた。
(この子には、私達では測り知れない力がある。もしかすると私の力を超えてしまうかもしれない。そして、押さえられないかもしれない)
それから二年間、ゆっくりと二人で話し合って、あの子の力を押さえられるような道具を魔導士に頼むために、私の母国に行く事になった。
その間、あの子にはお留守番していてもらう事にした。
出掛ける時、スパークはモーレツに反対した。
でもなんとか説得して出掛ける事に成功した。
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第二章~The first friend ~
お父さん達が出掛けてもう三日、いっこうに戻ってくる気配が見えない。
「まだかなぁ・・・・・」
僕は近くの大きな桜の木の下に座り、呟いた。
一体何処に出掛けたのだろうか・・・・・
出て行くときに母親に渡されたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
すると、向こうの方からいつも僕をからかう三人組がやって来た。
彼奴らは僕の周りを取り囲んで、またからかった。
「あー、お前まだそんなん持ってんの!?だっさぁーwwwww」
「っく・・・・・・」
僕は泣くまいと我慢する。
でも目から雫が一粒、二粒と降下して来る・・・・・
もう、止まらない・・・・・・
「また泣いてんの!?弱虫弱虫ぃwwwあはははははは」
いっつもこれだ。彼奴らは村の百姓のうちの息子で、何か在ると必ず僕のせいにする・・・・
・・・・・これもお父さんとお母さんが異種族だからだよな・・・・・
僕は生まれて来ちゃいけなかったの?
お父さん、お母さん・・・・・・
「ちょっと!!何やってるのあんた達!!」
そういい僕の前に立ち塞がったのは、自分と同い年くらいの気の強そうな女の子だった。
「なんだぁ、お前 よそ者は手を出すなよ」
「はぁ!?」
その子は少年につかつかと歩み寄り、掴み掛かった。
「あんた言ってる意味分かってんの!?よそ者だってぇ!?だから何よ!!いじめられてる子をほうっておけとでも言うのぉ!?」
「あ・・・・・」
僕は何も言えないままその光景をジッと見つめていた。
「バッカみたい!!何それ、あんたどーせこの村の百姓かその辺の子供だろうけどねぇ、そうやって威張ってばかりいると痛い目にあうのよ!!第一ここにはエメラルドの守護者がいるんでしょ!!」
そこまで言うと少年の顔が引きつった。
「その守護者さんに用があって来たんだけど、あんた達の事言っても良いわよ?」
少女が不適な笑みを浮かべる。
「わ・・・・・わかったクソッ話せっ!!」
少女が手を離すと、彼奴らはそそくさと逃げ帰って行った。「覚えてろぉ~っ」と言う言葉が木霊する。
「分かったって何が分かったのでしょうねwww」
少女はあきれ顔で笑う
彼女は振り向いて、僕に手を差し伸べた。
「大丈夫だった?あなた」
「う・・・うん、大丈夫・・・・」
僕はその子の差し出した手を握り、支えにして起き上がった。
何となく気まずくて目を逸らす。
「目は琥珀色、薄鼠色の毛並み・・・・もしかしてあなたがここのエメラルドの守護者?」
「はえっ?」
いきなり何を言い出すかと思えば・・・・
「あなたでしょ!!スペード・ザ・ヘッジホッグさんて」
「お父さんの事?お父さんは母さんと一緒に遠くに買い物に出掛けてるけど・・・・・」
そう言うと少女は落胆したようにガックリと肩を落とした。
「ごめん、なんか悪い事言っちゃったかな・・・・・」
「大丈夫、あ、挨拶忘れちゃった。私はサファリ、サファリ・ザ・リグレートよろしくね。」
「僕はスパーク、スパーク・ザ・ヘッジホッグこちらこそよろしく」
これが僕に初めて出来た友達だった。
聞く所によるとサファリは、父の旧友から使いを頼まれて遠方からここまで来たのだとか・・・・・・
「それにしてもすごいな~サファリは、そんな遠くから一人で来るなんてさ・・・・・」
「そこまですごくもないよ//」
サファリは照れくさそうに頭をかいた。
結局サファリは数日間、僕のうちでお父さんの帰りを待つ事になった。
正直ちょっと嬉しかった・・・・
「たっだいまぁ~帰ったぜぇいスパークぅー」
父さん達が帰って来たのは、それから一週間後の事だった。
「おかえりー」
僕は父さんに抱きついた。
父さんは僕の頭を撫でてから、サファリの方へ目をやった。
「ん?お前、スパークの友達か?初めてだな、こいつが友達なんか連れてくるの・・・・」
「あ・・・ご挨拶が遅れました。私、スペードさんに渡してほしいととある方から使いを頼まれて来ました。」
そう言うと、サファリは一通の手紙を取り出した。
「あん・・・・・・?」
そう言い、サファリから手紙を受け取ると封筒を切り、手紙を取り出した。
「・・・・・・・・おい、これ・・・・・」
そう言い、母ルシアにも手紙を見せる。
「どういう事だ・・・・」
いつも冷静な母が珍しく、声を荒げて問い返す。
「結界が・・・・・解けかけている・・・・だと!?」
「くそう・・・・・・なんてこった・・・・彼奴の身に何があったんだ・・・・・・・」
父さんは、悔しそうに目を伏せた。
「他の奴らは無事なのか・・・・・」
「多分な・・・・・・・今頃、ソシアが各地に伝書鳩を飛ばしている頃だろう・・・・・・」
「そうだな・・・・・」
「何が書いてあったのですか?」
サファリが尋ねる。
「いや、お前らには関係ねぇ話だ。気にすんな、」
父さんはそう言いながらエメラルドの方にかけて行った。
「サファリ・・・・・だっけ?今夜はもう遅いから、泊まって行くと良い」
「は・・・・はい・・・・・」
母の様子もどこかおかしい
夕食は、三人で食べた。
今日のおかずは大好物のお稲荷さんだった。
でも、美味しいなんて思わなかった。
(父さん・・・・・・・・)
窓を見て、そっと呟いた。
中間に続く