持論。
僕が物語の中心を作るとして、僕を中心とした物語が出来るのだろうか
僕がやっている正義は君から見たら悪でさ。君は間違ってるって言うんだ。
僕から見た君は悪でさ、僕はそれを正そうと思うのさ。
「正義が勝つ」なんて言う馬鹿げた話があるけど、でたらめだ。
彼等は自らの持論を持って自分に背くものを排除するんだ。
君だってそうでしょ?受け入れたくはないこの世界を、君は別の世界へと作り替えようとする。
僕らには意思というものがある。
あった所でどうにかなる所ではないんだけど。
一方を傷つけない限り、もう一方は生きられない。それが善と悪の定めなのだと思う。
君は、最初にあった時とは違う目をしてた。怯えたような、そんな目。此処で君は僕とのけじめをつけたんだと思った。
僕も変わったのかな。なんて思ったりして。
人を殺し、支持者を集めた。足元は常に血の海。抜け出しても、体中から流れる誰かの血は、枯れる事はない。
これが僕の定めならば、僕は僕の持論に抗うような事は二度としない。目の前が朱に染まってゆく。全てが赤の世界。
僕はこの流れ落ちる血の数だけ、人々を殺めてきたんだ。
いつものように、誰かの血で紋章を描いてさ、また僕の手を赤く染め上げるんだ。まだ息のある奴らも、そのうちくたばるよ。空は満月だ。人里から離れてて、お星様がキレイ。
僕は乱れた毛並みを整えて、血の絨毯を敷き詰めながら歩いていった。
まだ僕が、ひとりぼっちのお話。
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「最近、この辺りで一家惨殺事件が多発してるらしいですよ。」
あまりにも悲惨すぎて何がなんだか分からないような事になっているらしいのだ。
「赤い絨毯・・・か。」
数ヶ月前、王国で大騒ぎを起こして消えた奴を思い出す。あの姿は、自分の目にも確と焼き付いていた。
「・・・・どうしたの?」
「何でもない」
此奴は首を傾げて、またとことこ歩いていく。此奴はまだ知らない。顔見知りがあんな事をしたなんて微塵も思ってはいないのだ。
たまに飛んだりはねたりして、小石に躓いて転ぶ。起き上がる際に、ぴょこんと特徴のあるマリンブルーの毛が覗く時もある。
相変わらずブーツは歩きにくいようで、こういう草道に入るとよく転ぶ。
「これやっぱり歩きにくい・・です。」
慣れない敬語とまだ履き慣れないブーツはやっぱりキツいようだ。
「ねえねえ」
「どうした?」
「あそこに誰かいるよ?」
指差した先には、影があった。普段なら気にも留めない住人のような影だったが、今回は違った。
「らぬめっと・・・?」
「!!・・・まてっ!」
気にも留めず歩みを止めないあの子。脳裏にはまた、あの赤い瞳が映し出されていた。
まだ俺が、二人ぼっちのはなし。