黒の国〜影の森〜

誰しもハッピーエンドな訳は無いのだから。バッドエンドはすぐ其処まで来ている。

図書館 1/2

図書館。別名「知識の宝庫」そのなの通り、昔の人々が、現世に伝えるために作った資料を一つの場所にまとめたもの。

 

 

私が瑠璃の森であのような事になる前は、アファレイドの中でも一番大きな魔術学校の総合魔術の教師をしていたのです。

しかし、アファレイド大図書館にほぼいるために、授業を受けられた生徒は運が良いと言われるまででした。

 

 

まずは簡単に我が校の説明をさせていただきましょう。

 

この学校には大きく分けて三つの区分けがされています。

まず始めに入るのが「初等部」と言われる区画です。

 

そこではまず、「防衛術」「回復術」「攻撃術」「魔法薬学」などのジャンルの基本呪文と、できた理由などを、六年程かけて学ぶのです。

 

毎年、年度末には進級テストと言う物があり、その成績によっては飛び級する事も可能である。また、参加は生徒の自由である、つまり、もう一年その学年の授業をうける事も可能であるということ。進級テストの成績が平均点よりも悪ければ落第である。 つまり、退学処分がくだされると言う事です。

 

次に「中等部」です。ここに入ると、まず二年間は初等部で覚えた呪文などのさらに上をいくレベルの魔法を覚える事からはじまります。

さらに、三年目では、攻撃魔法、防衛術の中に新たにジャンルがふえます。

それは、「間接魔法」です。防衛術の中に、「補助魔法」という新しい魔術が入って来ます。

なお、間接魔法は、防衛術の中に、補助魔法は回復術にもジャンルが入るので要注意です。

 

そして、回復術の中にも「便利魔法」と言うジャンルがふえます。さらに、その年には卒業試験があり、合格した者のみ卒業、又は高等部への進学が許諾されます。

また、中等部でも初等部と同じで年度末に試験があります。

 

ここで軽く説明を入れますね。

 

攻撃魔法:主に相手にダメージを与える魔術。初等部の頃に「攻撃術』のジャンルで基本呪文を習う。火の玉を打ち出したり、強風を作り上げたりするなど、破壊行動をメインとした魔術である。

 

防衛魔法:主に自身や味方を守るなど、我が身を守護をする魔法です。初等部の頃に「防衛術』のジャンルで基本術を習う。火を消したり身を隠すなど、身を守るために使われます。

 

回復魔法:傷ついた物を癒すなど、攻撃魔法とは対照的な魔法である。初等部の頃に、「回復術』のジャンルで基本呪文を習う。

自然治癒力を高めたりできます。治癒する内容は、怪我や毒、精神的な物から死者の蘇生など様々です。なお、死者の蘇生は高等部でも習えるかは分からない。また、魔法によっては、攻撃魔法ではあまり効果がないとされている。邪悪な者(悪魔や魔物)などを攻撃する事も可能である。

 

魔法薬学:主に、薬を生成する。これは、魔力がなくとも作成する事が可能である。初等部の頃に「魔法薬学』のジャンルで生成する方法の基本を習う。これは、中等部でも習う。解毒薬などの薬から、不老不死の薬まで、様々な物を造り出す事が可能である。 作り方は不明であるが、不老不死の薬の生成法を生徒に教える事は、法律で禁じられている。

 

 

間接魔法:対象の物体を妨害するのがメインとなります。また、間接魔法は物体の能力を下げる。魔法を封じる。行動を制限するなど、バリエーションに富んでおります。また、相手を死に至らしめる魔法もありますが、これは普通は習う事はないのでご安心ください。

また、注意点として、攻撃魔法とは違うので気をつけていただきたいのです。理由としては、間接魔法は、相手に直接攻撃をしてダメージを与える訳ではないので・・・。まぁ、稀に直接的にダメージを与える物も出てはきますがね。

ジャンルとしては『攻撃術』と「防衛術」の二つをかねそろえた稀な魔術ですが・・・。

テストでもここを間違える方がいますのでどうぞメモしておいてください。

 

補助魔法:これは、間接魔法とは対照的に対象の物体を支援して、こちらを有利な状況にする魔法です。味方の魔力を一時的に強化したり壁を作り上げたりします。また、敵にかけられた間接魔法の効果を打消すといった回復魔法のような物も含まれるため、「防衛術』と『回復術」の二つをかねそろえている。

これもテストで間違える生徒が例年居るので、要注意である。

 

便利魔法:これは、生活の上で大切の食事を作り出す事や、衣服などを生成するなどです。便利魔法は書物などによっては「その他魔術』に分類される事も多い。魔法例として、テレポートなどもその類に含まれる。

 

 

 

最後に高等部です。だいたいの生徒は中等部三年で卒業試験で合格した後に卒業します。その中で、好成績でかつ高等部への進学を自ら望む者のみが進学する事が可能である。

一年の間は間接魔法、補助魔法、攻撃魔法、防衛魔法を重点的に学んでゆく。

二年目からは自分の学びたい分野の所へ行く。

 

防衛術や攻撃術など、戦いに使用できる魔法を基盤とした「攻防魔術」分野

回復術や魔法薬学、便利魔法など、私生活で使える魔法を基盤とした「生活魔術」分野

間接魔法や補助魔法など、補助をする魔法を基盤とした「援助魔術』分野

それらを総合的に学習する「総合魔術』分野などがある。

 

また、高等部の年度末のテストでは、平均点に届かなかった者は皆強制退学させられる。飛び級はない。

三年目の卒業試験では、それぞれが学んで来た得意分野の試験が行われる。

合格できた者のみ高等部を卒業可能である。不合格しゃは卒業できるまではずっと留年である。

 

 

また、どの学部でも才能がないと思った物は自主退学する事が可能であります。高・中等部の三年生は除く。

 

 

さて、そろそろ話に戻りましょうか。

そんな訳でありまして、この魔法学に携わる者達にとってこの国の図書館は、宝なのです。

ここでは初等部から高等部。魔法をお教えしている先生や卒業生も使用しております。 何故ならそれは、学校では教えてもらえない魔術をこの本達は教えてくれるのであります。

もちろん、 魔法学の本だけではなく、民話や童話などの娯楽本もありますので一般の市民が借りにくる事もあります。

 

しかし、基本は学校の生徒達が一般的でございます。

 

 

私はそれを毎日一冊ずつ、厚さ五センチはあろうかと言う本の膨大な量の知識を頭の中に入れているのです。たまにですが教室へ出向きますね。

 

最近、高等部に噂の生徒が居るそうなのです。

なんでも、あのウォイス様が当校に引き入れたようでとても才能があると伺っておりました。何でも入るなり、高等部まで一気に飛び級した生徒なのだとか。

一度だけ指導した事があったのですが、その方は、他の生徒に比べて幼かったので、私でもすぐ判別がつきました。初等部に入学もせずに飛び級は異例のこと。しかし、彼の魔力はすばらしいもので、教えた呪文をすぐさま吸収してゆく。こんなに嬉しい事は他にはなかったのです。

 

なかなかこんなに優秀な生徒は居ないのですからね。

年度末の試験ではダントツの一位を取ったという。驚きです!

 

次の年にその子はウォイス様が教えている総合魔術の分野へ行かれたのですが、この図書館にちょくちょく顔を見せてくれます。

 

「ノヴァ先生ー。」

「なんなのです。ラヌメットさん、いい加減覚えなさい!図書館ないは大声で私語禁止!!走らない!!本を大切に扱いなさい!!何度言ったら分かるのですか!!」

遠くから私を見つけた例の彼はダッシュで駆け寄って来ました。

いつもの光景ですが、私が注意すると彼はしょんぼりします。これだけ優秀な人材でありながら、基本の基本がなっていないのですから困った者です。

 

「はい。というか、先生も大声出してるし、貸し出しカウンターの上に読み終えた本山積みにして、お昼食べながら読書してる人にいわれてもあまり説得力が・・。」

「これが日課なのです。閉館時間にはきっちりと出て行きますし、貸し出しの役委員も引き受けてますし。それに、目上の人には敬語を使いなさい敬語を。」

「もう、良いじゃないかぁーウォイスも許してくれてるしーお友達もそうだしー」

多分それは、もうみんな呆れてるからだと思うのですが・・・。

私は読んでた魔法学の本にしおりを挟み、ぱたんと閉じて彼の方を向いた。

彼はビクッとして顔を下に背けた。

 

「なんなのですか、用とは・・・?これでも忙しいのですよ、私」

「本読んでるだけじゃん」

それが私の日課だと言ってるじゃないですか。

 

「それで居て給料もらってるんだから凄いよな。」

「で、ようは?いい加減テレポートでもしたい気分ですよ」

私はずり下がっていた眼鏡をかけ直して周りから浮いて見える彼を見つめた。明らかに幼く浮いているのだが・・・・。

 

「んっとな、ウォイスから・・・「先生付けなさい。」

「はいはい。ウォイス先生からの伝言で、今日閉館した後に合えないか?だってよ」

「閉館後ですか・・・。今日は自宅に戻る途中で近所のリーヤさんのお見舞いに行った後に愛人に会いに行こうと思っていたのですが。」

「さりげなく自慢しないでよ。何かムカつく。というか、あんたにもそう言う人居たんだ。」

彼は、若葉色の髪をかきあげてムスッとした。

 

「居たんだとは失礼な。私が本だけがお友達とでも言いたいのですか。

 別にいいでしょう。リーヤさんのお見舞いのあとでいいでしょうか。私の日課ですので、そのあとでしたらいつでもよろしいですよ。」

「あんたは飽く迄(あくまで)も日課優先なんだな。」

 

彼は、長い耳の先の毛をいじりながら話す。

「先生に向かってその口調は辞めなさい。とりあえず、伝言頼みますよ。」

「先生。僕は貴方の伝書兎ではないのですよ。先生が自らいってくださいよ。」

 

「伝書鳩と兎をかけたのですね。面白くはないですが、そうでもない程度に面白いですよ。それに私には、今日のミッションが終わってないのです。この本を閉館時間までに読み終えるのが今日のミッションです。」

そう言って私は先ほど読んでいたいつもの倍の厚さはある本を取り出す。

表紙には「転身の術と合成魔法』と書いてある。

 

「どっちなんだよ。ミッションって・・・。それも日課なんでしょ。はいはい。」

一人で納得しないでください。

「あ、あと、この本借りてくから判子お願い。」

そう言って貸し出しする図書三冊とカードを私の前に提示した。

 

「・・・・。」

印鑑を持って紙に判子を押しかけた手を寸前で止める。

おもむろに印鑑を置き、そのカードと貸し出しする図書を見比べる。このカードは手書きで日にち、借りる本の題名、合計冊数を書き込んで提示する事になっている。しかし変なのだ。カードに記名されている題名と本の題名が一致していない。更なる不具合をみつける。

「ラヌメットさん。」

「あ、はい。」

彼はよっぽど私が怖かったのか、そのまま半歩下がってその場で気をつけの姿勢をした。

「あなた、貸し出し禁止図書を持ち出そうとしましたね。これ。」

そう言って重ねて置いてあった本のページをめくると小さな本が一冊出て来ました。

「この本は何の本か分かっていますよね?」

「・・・禁書。不老不死の薬の作り方から禁断魔術まで、禁断魔術の多くが収録された本です。』

おかしいな、しっかり保護魔法かけたつもりなのに・・・・。そう言って頭を掻く。

「この図書館は特殊な魔法によって、どんな魔法でも溶けてしまう呪が施されているのです。それにあなた、三週間前に貸し出した本がまだ返って来てないのですが。いい加減返してください。もうとっくに貸し出し期限は過ぎているのです!!それに、このカードの題名、文字が間違っています!!」

「細かいなぁ。だから、あの本はラネちゃんに貸しちゃっていま、王宮にあるの!!」

 

「何故王子に貸してしまわれたのですか!!貴方が王子様とご縁がおありなのは承知しておりますがね。あなた、第一他人には貸し出しては行けないと、再三言ったではないですか!!」

バンッと、私はカウンターを力強く叩いた。その音に驚いたのであろう他の利用者達が一斉にこちらを振り向いた。私はそんな事には目もくれずに目の前にいる彼を睨む。

「もう貸しちゃったし仕方ないでしょ・・。彼から返してもらわなくちゃ。最も、僕が王宮に自由に出入りできればいいんですがねぇ。ウォイス・・・先生がお世話係してるみたいだし、頼めば何とかなると・・」

「ウォイスに頼む事は許しません。自身の力で返してもらって来なさい!!どんなに取り繕うとも「本音薬」がありますからね!!その禁書持ち出しに関しても、厳しく罰をうけていただきます。」

そう言って私は、再びずり下がった眼鏡をかけ直し、懐から原稿用紙三枚を取り出す。

「この上三枚びっしりと、反省文を書いて明日の昼食までに私に提出しなさい。二言は許しません。言い訳も許しません。忘れた場合は今後一切の図書の貸し出しを禁じます。」

よろしいですね。そう言って彼を見つめると彼はぶんぶんと首を振って用紙を受け取り一礼して去って行く。

「ちょっと待ちなさい。」

「は・・・はい。」

「これは禁書の件の罰ですからね。王子への無断貸し出しの件と図書を期限が過ぎても返却できてない件とは別ですよ。今週中に本を返却できなかった場合は・・・」

「わわわ、分かったから。もう言うなよっ」

そう言って彼は落とした用紙を拾い上げ、転がるように外へと出て行った。

「まったく、忙しない人ですね。」

そう言って、私は読みかけの本を開いた。

 

一人は言う、「戦いなど虚しいだけ』 一人は言う、「僕を一人にしないで』 一人は言う、「人それぞれで良いのだ』 一人は言う、「片方を守る者、もう片方を失う」 四人は言う、「この物語を作るのは自分たち自身なのだ。』と、 だから僕は守る、彼女に頼まれたあの子と、この世界の運命を・・・・・・・・