黒の国〜影の森〜

誰しもハッピーエンドな訳は無いのだから。バッドエンドはすぐ其処まで来ている。

〜魔導士ノ記憶〜別章

『お前は今日から王子ではない。」

そうあの子に言った時、彼は少し悲しげに、うん、と頷いた。

まるで、父との記憶を忘れるのが怖いかのように

 

まだ、王が死んで間もない頃だった。

何時また彼奴ガ王宮に来るのかは分からない、彼奴ガここへ来て、まだ幼い王子を攫ってゆくのが怖かった。

俺は王子をこっそりと連れ出した。誰にも言わずに。

彼奴から守るため、そして、王家の血を途絶えさせないためにも

 

 

彼は自分に迷惑をかけないように気丈に振る舞っていた。

自分が一番辛いだろうに、決して人前では泣かなかった。

 

俺はこの子を弟子に取った。

弟子でもないのに幼子を連れていると分かれば、何かと大騒ぎされるかもしれない、その噂が王宮にでも入れば大変な事になるだろうと思ったからだ。

それに、この子には魔術の才能があった。よくよくは、俺の右腕として、彼奴と戦う事ができたら・・・・などと思っていた。

 

 

 

「♫♪~♪」

 

ある日、通りかかった町で、一人の歌唄いと出会った。

歌は、あの悲劇の事を語り尽くしていた。

あの子は悲しそうに、でもその素敵な歌に、耳を傾けていた。

いくぞ。そう声を掛けたら。またうん、と頷いて、追いかけて来た。

その時、握られた手の感触を今でも覚えている。

暖かくて、それでいて悲しい、俺はそんな事がひしひしと伝わってくるこの子の手を、握り返した。そしたらこの子はもっと強い力で握り返して来た。

自分は求められているのだ。と改めて感じた。

 

「みてみて!できたよ」

そう言って駆け寄ってくるあの子の右手には、小さめの光の玉ができていた。

この年の子には結構難しい魔法なのに、教えて二日でマスターした。

「よくできたな。」

そう言って褒めてやったらあの子はすごく嬉しそうに笑った。

「僕ね、ウォイスみたいな魔導士になる!!」

そう言って笑うこの子は、全く持って幼少期の王にとても良く似ていると、改めて思った。

 

 

 

 

 

ある 魔法の王国に 二人の魔法使いが居ました

彼等は王に仕えており 周りからとても信頼されていました

 

ある年王様と妃様の間には お姫様が生まれました

しかし 姫様は はやくになくなってしまいました

王と妃は 酷く悲しみました

それから数年後 今度は王子様が生まれました

しかし 王子を生むと同時に 妃様は亡くなってしまいました

 

ある 魔法の王国に 二人の魔法使いが居ました

彼等は王に仕えており 周りからとても信頼されていました

 

王様はひとりの魔法使いに言いました

「自分が死んだら王子を守ってはくれないか」

魔法使いの 答えはもちろん Yesだ

 

 

ある 魔法の王国に 二人の魔法使いが居ました

彼等は王に仕えており 周りからとても信頼されていました

 

ある年 一人の魔法使いが 黒に染まってしまいました

彼は王を殺してしまいました

幼かった王子は その後 行方知れずとなり

もう一人の魔導士も いつの間にか きえてしまていた

 

ある 魔法の王国に 二人の魔法使いが居ました

彼等は王に仕えていました

今宵 二つの力が 光と影に別れし時 

世界は何を見るのか その行為は正しいのであろうか

 

あるものが予言した

 

王国の 中庭に 赤い月光花 咲き乱れし時

世界に 大きな異変をもたらす出来事が起きるであろう

 

 

我々は歌う

 

 

赤い花が咲き乱れし時 我らは何をすれば良いのであろうか

赤い花が咲き乱れし時 消えた魔導士の片割れは 何をするのだろうか

赤い花が咲き乱れし時 世界を救いし者は現れるのであろうか

 

答えは誰もが知らぬ  神に問うても 予言者に問うても

誰もが知らぬ 我々はただ祈る事しかできぬ 無能な獣

 

世界を救うとは 一体なんなのであろうか

それは ただ一人の戯言なのではなかろうか

 

本当に正しい事は 何なのであろうか

この世界は 正しくないものの塊 なのでは無かろうか

 

それでも我らは祈り 唄い 綴ろう

我らの信ずる 救いし者のために

たとえその者が偽善者であろうと

 

我は祈り 唄い その者の信ずる未来へ その者を導こう

たとえどんな 世界(終末)が待っていても

 

 

世界が終わるのだとしても

 

我らの信ずる 救いし者のために

 

 

ある日、聞いた懐かしいこの曲は、紛れもなくあの町で聴いた曲と同じものだった。

 

声の聞こえる方へ歩み寄って行くと、背を向けて語っている見慣れたあの子が居た。

この曲を聴いたのはもう六年程前で、あの子もすっかり大きくなって、もう直き十三の誕生日を迎えようとしていた。

 

「あ、ウォイス。」

気がついたあの子はいつものようにこちらを向いて笑った。どうしたの、と

あの子の手には弦楽器を抱えていた。

「さっき、歌っていただろう。かなり昔に聴いた曲だが、覚えていたのか」

「うん、ちょっと、魔法の練習と息抜きがてら、歌ってみました。」

そう言う彼の顔からは笑みは消えていて、代わりに悲しい表情が伺えた。

 

「王を思い出すのか」

「そんな事無いよ。もちろん思い出しはしますけど、父上は・・・・」

もうこの世には居ないし、あの子は楽器をを強く握った。

「ウォイス、君はこの世界の事をどう思うんだい。僕は、すごく悲しい世界だと思うんだよ。」

彼はことり、と楽器を足元に置き、湖のふちへ歩み寄った。

 

「戦争とか、権力争いが絶え間なく続いているこの世界、僕はすごく悲しいんだ。何でこんなにくだらない事で人々は争い合うのだろうか、そう思うと僕は、この世界がとてもつまらなく思えてしまうんだよ。なんて傲慢な、なんて強慾な、それでいて、何で悲しいんだろうって」

 

自分は何も言う事ができなかった。まるで自分が彼に何か言う事を拒んでいるかのような。

「確かにそうだ。この世界は残酷で、悲しい世界だ。俺はそのくだらない争いの繰り返しを、何百年、いや何千年と見て来た。俺は死ねない、死にたくても、死ねない体なんだ。」

それを言った時、彼は驚いて目を見開いた。

「俺の大切な人が目の前で、一人二人と死んでいくのを、この目で見て来た。」

「ウォイス・・・・。」

「人の一生なんて、俺から見たら、ほんのすぐだ。だからこそ、人はその短い一生の間に、欲望と言うくだらない欲求を求め、弱いものを虐め、強いと認めてもらうためにくだらない争い事をして来たのだと、俺は思う。」

 

俺は彼の目を真正面から見つめた。

王から受け継いだ生粋の蒼い瞳。彼は王の生まれ変わりなのではないのかと思う程、立派な姿をしていた。

 

「王にそっくりだ。その姿も、瞳も、全てが」

「僕は父上ではないよ。容姿は似ているかもしれないけれど、僕は僕。父上ではない。」

「そう言う所が、だ。」

そう言うと、彼はまた笑って、「それでも、僕は僕だから」と答えて、野宿している森の奥へと戻っていった。

 

 

 

それから二年が過ぎ、俺達は、彼奴との最終決戦の場に居た。

闇の住人の封印により、彼奴の力は、弱まって来ていた。

最後に俺と、あの子で巨大な結界を敷いた。人柱には、あの銀と黒い針鼠達が名乗り出てくれた。封印する最中、もうすぐ彼奴は結界に封じ込められ、そこに居た誰しもが、安堵していた。しかし、その最中悲劇は起こった。

 

彼奴が最後の力を使い、彼と、あの蒼い針鼠を結界の中に引きずり込んだのだった。

あの子が引きずり込まれた事によって、魔力が弱くなり、結界に封じ込める力が弱くなった。

「ウォイス!!」彼は叫んでこちらに手を伸ばした。

俺は、封印の事などもうどうでも良くて、あの子に手を伸ばした。

でも、その手は空を掻き、あの子は何かを叫んで結界の中に引きずり込まれていった。あの子は泣いていた。

今思えば、あの子が俺の前で泣いたのは初めてかもしれない。

 

結界はもう全て閉じてしまった。だが、完璧な封印とまでは行かず。百年後、また結界を閉じなければならなかった。

もう一人の蒼い針鼠も、猛毒の致命傷を負い、余命は一週間程であった。

 

 

それから百年間、俺はずっとあの子を捜して来た。

あの時、結界を作った際に生じた未来への時の流れに、あの子が飲み込まれたかもしれない。そう思ったからだ。

 

 

 

結果的にあの子は未来に居た。

しかも、 彼奴の封印が緩んでしまう年に

俺の名前と自分の名前だけを覚えて、他の記憶はタイムスリップの衝撃で、全て失っているようであった。

 

俺は、あの子に接触する事ができた。

アファレイドで正確な話しをする。そう言い。一方的に通信を遮断した。

とりあえず、生きていただけで良かった。

そう安堵して、俺は、その場を離れた。

 

「♫♪~」

「何歌ってんのシャオン?」

「わかんない、何となく浮かんで来たんだ」

そう言って歌を口ずさんでいる彼は、いつもより楽しげに笑っていた。

 

 

 

 

あとがき、というか、なんというかwww

あの途中にあった歌的な何か、誰かメロディー付けて歌ってくれると嬉しいです(笑)

というか作ってください(笑)

なんか、ゆうゆPさんのニコ生『イヴ実況」見ながら書いてたので、文がおかしい所があるかもですね(笑)

なんか、素っ気ないですけど、終わりますね

終わります。

一人は言う、「戦いなど虚しいだけ』 一人は言う、「僕を一人にしないで』 一人は言う、「人それぞれで良いのだ』 一人は言う、「片方を守る者、もう片方を失う」 四人は言う、「この物語を作るのは自分たち自身なのだ。』と、 だから僕は守る、彼女に頼まれたあの子と、この世界の運命を・・・・・・・・