風と共に月の花 悲劇のお話 中
第四章~月の華~晴乱十七年
それが何年も続き、七年の歳月が過ぎた。
その頃には皇子も大きくなり幼少の頃の王を思わせるようなマイペースを見せた。そのころも、アファレイドの治安は安泰、他国との交流も盛んだった。
そして僕は、ウォイスから太鼓判を押され、やっと一人前の宮廷魔導士になれたのだった。
そんなある日の事だった。
僕はふと思った。そう言えばラネリウスの代になってからというもの、一度も争いが起きなかった。僕は何故かその時、つまらないと思った。
それに僕は、師匠であるウォイスなんかより、ずっと魔力は上だ。なのになんで僕は・・・・・・僕は・・・・・・・僕は・・・・・
「ラヌメット~やっほ~」
「はい?」
何やら窓の外から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
外を見れば見慣れた青い毛並みの・・・・・・・・
「シ・・・・・・シャオン様っ!!」
此処は三階
外を見れば、三十メートルはあろうかという大きなヤシの木に皇子のシャオンが登っていて、こちらに向かって手を振っていた。
その側には、王とアッシュの姿が・・・・・・・・
「王様、これはどういう事ですか!!」
広い王宮の庭園に降りて来た僕は見つけるなり王にきいた。
「僕も昔アポトスの教会に一度上がった事があるでしょ?それと同じ事をシャオンにも体験してもらおうかなと思って」
「それでわざわざアッシュを呼んだのですか!?」
「いや、俺は止めたんだけどよ、ラネリウスがどうしてもって言うから」
横からアッシュが口を挟む
「要するに貴方も面白半分でやったのでしょう?」
「そんなに怒らなくても良いじゃん、たいした事じゃないでしょ?」
「たいした事です!!」
「まぁまぁ・・・・・「貴方は黙ってなさい!」
アッシュはこの際スルーで
その後三十分ばかり僕は王様をしかりつけ、その間にアッシュが皇子を地上へ降ろした。その怒りが収まったのは、アッシュが王子を連れて戻って来てくれたお陰である。
そうでもしなければ僕は、もっと王をしかっていたかもしれない。
ラネリウスをしかり終えてから自分の部屋へ戻った時の事だった。
玄関口の方から兵士達の話し声がして来た。
「なぁ、今の王様はすごく温和なお方だけどよ、きっと戦になったらこの国は壊滅すると思うんだよ」
「なぜだ?」
「もちろんそれは、王様が戦が嫌いな事が一の理由だよ。そしてそのニ、このままで良いと思ってるんだぜきっとこの領土で、この国の兵士達はもう長年戦をしてないから、きっと今攻められたらこの国は滅びるだろうな」
「おい、此処側近のラヌメット様の部屋だぞ!」
「聞こえてないと良いけどな・・・・・・」
バリバリ聞こえてますよーと、心の中で呟いた。
「ん・・・・・・・!」
いつの間にやら自室の窓が開け放たれていた。開け放たれた窓からは満月の光が差し込んでいた。
おかしい、開けた覚えなど無い。
「誰だ・・・・・」
「さすが、お気付きになられましたか、さすが宮廷魔導士なだけはありますね、ラヌメット様」
黒いフードをかぶったそいつはくすりと笑った。
「お前は誰だ。」
僕はとっさに戦闘態勢をとった。
彼は手を挙げ、こう語った
「そんなに気を立てなくてもいいですよ。僕は貴方を助けに来たのですから」
「どういう事だ。」
「貴方は数千年に一度生まれる。才能ある一族の中でも特にすばらしい能力、いや魔力を持つ者なのです。」
「どういうことだ。」
「貴方は昔、レヴィア―デンという王国が栄えた時にいた。たぐいまれなる能力を引き継いでいるイチジクの末裔なのですよ。」
彼は語る。レヴィア―デンは滅びてしまいました。それによって、レヴィア―デンは勢力をうしなった。その時に生き残った人が居たのです。それがこの国に居る貴方の師匠とでも言いましょうか。『永遠の魔導士』という名を持つ彼、ウォイス・アイラスです。そして、ウォイスと同等の魔力を持つものがもう一人居たのです。」
あの方が・・・・・永遠の魔導士と呼ばれているわけが分かった。
それだけ長く生ているという事だ。
「そいつの名は『黒の魔導士』通称紅月。彼は闇の魔術師でした。そして彼の子孫が貴方、ラヌメット様なのですよ」
「僕が、闇の魔術師の子孫・・・・・!」
「そう、貴方が・・・ですよ」
クスリと笑う彼のフードから、赤い瞳が覗く
「そんなはずなんか無い・・・・・。」
そんな・・そんな訳ない
「そんなに否定しなくてもいいんだよ。素直に受け入れなさいよ。先ほど貴方はあの王を憎いと思ったでしょう?それは、私達一族がどれほど競争心が強かったかを示しているのです。貴方は私の血を引く生き残りでもあり、そして、私以上の魔力を持つ貴方だからこそ、私が乗り移るのに最適な体なのです。」
え・・・・・・・・・・・乗り、移る?
「私の名前は紅月、まぁ、今はリーナという名で活動しておりますがねぇ」
クスリと笑ってかれはフードをとった
フードをとった姿は女性だった。毛並みは白くセサミロング、後の髪を大きな赤いリボンで束ねている。
「少しの間、お借りしていたのですよ、彼女の体を」
その子には見覚えがあった。たまに行くとよく仕事を手伝っていたのでよく覚えていた。
近くの魚屋の子で、魔術学校に通っていたと言う。すごく優秀だったそうだ。最近彼女が忽然と姿を消したのを風の噂で聞いた。
借りている・・・・!
「んまぁ、私はレヴィア―デンが滅んだ時に、ウォイスにより滅ぼされた・・・・はずだったのですがねぇwwwあの人も馬鹿ですよ。最後に私に情けをかけて、肉体だけを滅ぼしたのですよ」
「ウォイス様が・・・・!」
かれは(?)白い髪をなびかせ笑う
「あなたに頼みたい事があります。ラネリウスを殺しなさい・・・・・。」
「!?」
聞いた瞬間に全身の毛が逆立った。それを楽しんでいるかのように彼は言う
「貴方になら容易い事でしょう?」
用のないモノはさっさと排除すればいい。彼の目はそう語っていた。
殺される・・・・・・断れば僕は、此処で殺される・・・・・
「僕は・・・この王宮の魔導士だ。貴方の子孫であろうと無かろうと、僕はこの使命を全うする!!」
行った瞬間僕は、彼に襲いかかっていた。
下へ続く