風と共に月の花 悲劇のお話 上
※注意※
これは紅月の月光花のきっかけとなったお話
主人公はこの物語の引き金となった人物、紅月
そして、彼(?)の生い立ちから「アファレイドの悲劇(始まりの悲劇)」までを順を追って話していこうと思う。
そして、此処で閲覧する方に頼みたいことがある。
まず始めに、かってにこの設定を別サイトに展開しないようお願いいたす。
此処だけのお話にしてほしいので。
もちろんこの話関連もだめである。
そしてこの話は、決して人に教えてはならない。
誓って欲しい
ただの一人の子供として、魔法使いとして生きてきた彼は、何故あのようなことを仕出かしたのだろうか・・・
また、闇の道へ彼を引きずり込んだのは一体・・・・・・
第一章~始まり~藍星105年
何時からいたのだろうか・・・・・・
時は流れても、自分は存在しないかのように・・・・・・・・
人々から見られることも無く、触れられることも無かった。
それは僕も同じだ。
僕は、干渉はできてもその世界へ立ち入ることは出来なかった。
何時しか、人に必要とされてみたくなった。
何時しか、愛されてみたくなった。
何時しか、触れられたら・・・・・・。
そんなときに、一人の少女を見つけた。
彼女を一目見た瞬間に惚れてしまった。
でも彼女に自分は見えない。
思えば思う程苦しくなった。
振り向いてほしい、僕を見つけてほしい。
そう、例えるなら君は、一輪の嫋やかな花。
自分はただの石ころ、思っても届かない。
君には大切な人が居るようですね。
相手は思っていないようですがね・・・・・・
僕が君の心を奪ってやりたい。
彼を取り込んででも・・・・・・・・・・
何時からか僕は存在した。
人に触れられることもよくあることになった。
僕は、君の居る世界へ干渉することができるようになったんだ。
第二章~誓いの花と共に~嶺凛220年
「ラヌメット?あんた、何ぼおっとしてんだ?さっさと片付けちゃおうぜ?」
「うん、ごめんアッシュ・・・・・・・」
「ったくそんなにぼぉっとしてたら天狗にでも連れてかれちゃうぜ?」
「天狗は今時居ないと思うよ。」
自分たちは今日、アファレイド王国の中でも有数の神社、『霊峰神社』の落ち葉を掃除している。
理由は特に・・・・・・・・無い。
あると言ったら暇だからだ。
アッシュは久しぶりにアポトスからって来た友達
「あ、アシュー君、何やってんのぉ?」
向こうから走ってきたのは、次期王であるラネリウスだった。
蒼い毛並みが特徴で、サイドの毛だけが長く伸ばされており、下の方で毛と同じ色の髪留めで結ばれている。
この地区の王族は皆そうするのだと何時だったかラネリウス本人がそう言っていた。
服は目立たぬようにこの前自分が買ってあげた下町の服だ。
「君はまた王宮を抜け出して・・・・「あそこつまんなくてさ、僕もう少し楽しいことやりたいなぁ。ねぇアシュ君、教会の屋根にまた上りたいなぁ~」
大聖堂とは、アポトスという大きな都市にあるロセプタル教会という教会だ。アポトスの中で一番大きな教会で、あの国のシンボルと言われている。
あははははははと愉快に笑う彼は、どうしてそんなに外が好きなのだろうか
そして、どうやって王宮の中から抜け出しているのだろうか
それを僕達、いや皆が知りたがっていたが、彼は普通に、というだけであった。
「馬鹿野郎、お前を大聖堂の上にあげた後、修道女にとばっちりを食らったんだぞ!!」
「もう乗せらんねぇ」「えぇ~」
二人のやり取りは何時見てもおかしい
そんな彼等の様子を見て、僕はクスクスと呑気に笑っていた。
そして、目付人のウォイスが見つけてラネリウスを半強制的に城へ連れ戻すのだ。
連れ戻されてもなお、彼は数日後には王宮を抜け出すのだった。
そんな事がよく繰り返されていた。
そして、またいつもこのやり取りをしてウォイスに連れ戻される。
と、言う事が彼が魔法について教えられたりするまでの十年間続いていた。
昔からラネリウスはそうだった。
呑気で、威張ろうとはせず、何より民を大切にする事で民衆に好かれていた。
「争いなんて、無益なだけなのに」何時だったか彼はそんな事を言っていた気がする。
死んじゃうのに・・・・・・・・人を殺してまで得た土地なんか、嬉しくなんて思わないよ。
それが彼の言い分だった。
それから数年が経ち、彼は王の座を引き継いだ。
第三章~喜びと悲しみ~晴乱一年
昔から仲の良かった貴族の娘を妃にもらい、すぐに娘が生まれた。
国中が歓喜に包まれた。二人もとても嬉しそうに生まれたばかりの我が子を抱えていた。しかし、その娘は八つの時、流行病により病死してしまった。
二人は酷く悲しんだ。もちろん民衆達も。
三年後、今度は男の子が生まれた。
しかし、皇子を生むのと引き換えに、大切な王妃を失ってしまった。彼は彼女が好きだった海がよく見える高台のところに王妃を埋葬した。
その頃アファレイドは国が安定し、少しずつではあるが経済が進歩して来ている時期であった。
「おめでとうございます。」
僕は深々と頭を下げた
「ありがとう。」そう笑う彼は少し悲しそうな・・・・・それでも嬉しそうに笑った。
「でも魔法使いである君が会いに来るなんて珍しいね。何かあったの?」
「やっぱりキミは敏いね。僕、今度から王宮の魔導士として此処に上がって来たんだ。」
へへ、と笑ってみせる僕
「ラヌメット。お前は礼儀というものが無いのか。無教養にもほどがあるだろう?ラネリウス様は今じゃ国王なんだ。敬意を表せ」
「えー、僕は王様の幼なじみですよ?そう言う階級とか、身分制度的なの嫌なんですけど、ウォイスさんあと、僕そんなに頭悪くなんか無いですよ。」
この側近である僕の上司?いや先輩のウォイスはすごく細かい。僕がなんか言うたびに注意して来る。そう、例えるなら鬼だ。
「幼なじみであろうと、お前のような新人の分際で、俺に口出しするな。」
「はーい」「タメ口は使うべきではない」
あんたは鬼か!!と言いたいが、それは心に仕舞っておこうと思う
「別に良いよウォイス」「ですが・・・・・」
王の座る椅子の隣には小さなかごが置いてある。その中にはまだ幼い生まれたばかりの皇子がすやすやと寝ている。
毛並みは王と同じマリンブルー、瞳の色も同じ色だ。
「僕は別にそういうの気にしてないからさ。もう良いからウォイスもラッちゃんも下がって。」
ラネリウスは笑いながらそう言った。
よくよく考えて見ると、彼もずいぶん大人になった。すごく優しい一面もあるが、すごく怖い時もある。
そもそも僕は彼が王位を次いだ事を知らなかった。
その時僕は、魔法学校というアファレイドに唯一ある学校に居たからだ。
その学校は、才能のある者達しかいけない超難関の学校でもあったりする。
彼が王位を次ぐ頃は、僕は進級試験の時期で、必死に勉強をしていた頃でもあった。
その苦労の甲斐あって、今日から僕は宮廷魔導士のウォイスの弟子として、魔術を学んでゆく事になる。
「お前はどうしてそんなに礼儀が無いのだ。」
王室を出てからウォイスに言われた
「だって、めんどくs「お前がこれから仕えていく方に対して何を申すのだ。めんどくさいなどと言う事は・・・・・・「はいはい、分かりましたよウォイスさん」
長い話は苦手です。そう言わんばかりに彼の話をぶった切る
「本当に分かっているのか」
「もっちろん」
満面の笑みでそう言うと、いつもウォイスはため息をつく
仕方ないな・・・・・・
そう言わんばかりにこちらを見て、苦笑しつつ「さっさと始めるぞ」そういって修行の場所へ行く。
僕はそんな彼の後を楽しそうについていった。