オリソニ小説〜永久の月光花No.15 2/2
「はー」
教会の外に外に出てみたら雨の降る前のような空模様で、俺は声を漏らした
「埃っぽい匂いはしないけど・・・・変な空模様」
「そうだな。とりあえずシャオンを探そうぜ。」
「ええ」
そう言って大通り沿いを進むうちに違和感に気がついた。
「ねぇ、空が変なんじゃなくって、向こうの森も、黒くない?」
「そうか?」
言われてみれば確かに空のある位置とは思えない所に雲がかかっていた。
「朝方なら分かるけど、この時刻にってのはちょっと考えられないと思うわよ?」
「うーん・・・」
しっくりこない。と呟いた俺に対しサファリは「色彩的におかしいのよ」と近くに落ちていた小石を掴んで変な色彩とやらの森の方角になげた。
すると石は地面に落ちる寸前で何かに当たり、跳ね返った。スーパーボールのように気持ち良くガツンっと言う音がして・・・ガツン?
「は、跳ね返った!?」
「やっぱり。 なんかあると思った。」
「やっぱりって何だよ」
「何かしら?まぁ今思えば好都合だよね。だって私達がバラバラになってるし、敵からみたら思いっきり」
「あぁ成る程。つまり、別の所にシャオンとステアもいるって事か?」
「それは知らないわよ。勘だし」
そう言うとサファリは後ろに下がった。
「どうしたんだ?」
「黒いのが動いてる・・・!」
「黒いのって、ゴキブリか?」
「そっちじゃない!壁!バカっほら逃げよ!」
俺が壁を確認する前に俺はサファリに引っ張られて教会に逃げ戻った。
「結界・・・かもな。難易度は割と高い・・・」
教会に戻った俺達は、寝泊まりしていた部屋で林檎を食べていたアッシュに息も絶え絶えのまま支離滅裂な話を聞かせた所「分かった。」といい、窓を開け放った。本当に分かったのかは俺の知る由もない。
「やっぱりやっぱり!一度みてみたかったのよね!こんななんだ」
サファリは嬉しそうに教会の窓から身を乗り出す。そうこうしてる間にも黒い壁、否結界はじわりじわりと俺達のいる場所に間合いを詰めてきていて正直危ない。
「闇魔法・・・お前ら此処に来る前に誰かと争ったか?」
「たしか二回くらい襲われたわね。」
「ああ、紅月は数に入れなければ一回。二人の魔法使いらしき奴らに襲われた」
「そうなの?シャーレクの話だと三人なんでしょ?」
「待て、聞かせろ」
「三人っつーか、もう一人、兄貴がいたみたいだったぜ?」
「面倒な奴を連れ込んだな・・・多分その兄が原因だ、すごく兄弟思いだった筈だ。」
そう言うとアッシュはついて来いと言って階下に降りて行った。
******
「なぁっ!どうする?おいシャオン!」
「ちょっと静かにして!僕にだってどうすればいいか・・・」
考えることを知らないステアは僕の周りをくるくると廻ってて、僕は焦って手元にあった本を捲った。
すると木の上から面白そうに僕らを眺めてる奴が一人いて
「ふぅ〜外の布陣は焦ってるな。こう言うのも面白いや。」
「君は趣味が悪いね」
「元からだぜ?」
「そうかい」
野次馬は無視しないと。どこかにきっと糸口がある筈・・・・
きっとどこかに
『よくできた。魔法には必ず弱点がある。どんなに見繕っても取り除けないものがな』
不自然な声とともに世界がフラッシュバックする。
顔が見えない、それとも思い出せないのか。手元にあるのは一冊の本
『体力を使う魔法は詠唱が続く。噛めばおしまいとまではいかないが進行を遅らせられるだろう』
『魔法式は魔導士になら分かるだろう?』
深い青が搗ち合った。
「なぁなぁどうするよ!!」
ステアの慌てた声で気がついた。ドームは気がつけば教会の方に迫っていて僕は高らかに声を上げた
「ステア!ドームに攻撃しても駄目だ!本体を、術者を攻撃して!」
「ど、どうしたんだ!?術者って言われてもよ届かないだろ?」
「何でもいいよ!口に桃でも石ころでもなげて詰めてやればいいさ!もしかしたらそれで何か分かるかもしれない!」
「わ、わかった!半分は分からなかったけど」そう言うとステアは一目散に一番高い木の上に桃を持って行った。
「分からなくてもやらなくちゃ・・・何であろうと。言われた通りなら式が分かるのかもしれない。」
覚えてなければ付け直せばいい。僕は知らない筈のページを捲った。
******
「おいどうすんだ?」
「黙ってついて来い。」
アッシュの言動に首を傾げつつも彼の後をずっとついて行くとやがて彼に出会った広い講堂を過ぎ、奥の奥まで行くと、キッチンがあった。今にも崩れそうな床に気を配りながらきしむ扉を開けるとそこは普通のシンクと床に散乱した食器があるだけのキッチンで、あとは行き止まりだった。アッシュは見当たらない。
「どこかで見失った?」
「んな訳ねぇよ、俺ちゃんと確認したんだ!」
スパークはサファリに向き直って声を荒げた
「さっさと来い・・・カンテラは台所に点いてる奴を使え、マッチは一緒に置いてある」
声のする所を見ると床下だろうか、そこの板を頭で押し上げてアッシュは俺達を睨んでいた。
俺達が板を手で押さえたのを確認したらしいアッシュはそのまましたへと潜って行った。
案外中は広く、俺が立ってもまだ天井が高いくらいで、歩くのは苦にならなそうだ。ただ、カンテラで先をてらしてもまだ出口は見えそうになかった。
アッシュは俺達の数メートル先を転びもせずに淡々と進んでゆく、まるで先が見えてるかのように。
「さ、寒いな・・・」
「地下だしね。」
そんなを会話をしながら二十分くらいそろそろと歩いただろうか、突如視界が開けた。
突然のまぶしい光に俺達は目を瞬かせた。
「何分待たせれば気がすむんだ。早くしろ」
俺達の目が光に慣れた頃、そこはちょっと広い食料保管庫だということに気がついた。食料は皆腐ったみたいだが。
「こんな所に連れて来て、何をしようというの?」
「・・・・・結界を突き破る。」
そう言うとアッシュは何も無い天井を見上げた。
「は!?」
アッシュの突拍子もない発言に俺達は目を見開いた。そりゃあそうだ、何故そんな事を言えるのか理解不能だった。
「闇を破れるのは光だけ。昔友人だった奴が教えてくれた。」
「だった?」
「細かい説明は後だ。破れるかは分からんがお前らに協力してもらう」
そう言うと懐から1枚の古い紙切れを取り出しサファリに渡した。
******
「ティルト・・・・・」
汚くなっていた研究室の掃除を近々しようと思ってはいたが大分片付いた。こんな時でなければそう言ってごみの処理も出来るのだが、そうは行かない。
「ガナールを出せ!!」
崩れた廃材の中から鋭く尖った鉄パイプを掴み、私に突き立てた。
私はよけきれずに中途半端な体勢でそいつを睨んだ。
ティルト・・・どこかで聞いた。私のデータの中にはこの世界のありとあらゆるデータが入っている。絶対に見た。
「ダセ!」
「っく・・・!」
食い込んだ鉄パイプから機械同士がきしみ合う不協和音が頭の中に響く、改めて私はDr.とは違うと実感した。
「吸血鬼の事件ですっ!」
ガギンという鈍い音と共にティルトは横に倒れた。
「まだ耐久性には不安があったんですけど不安があって良かったです。へ・・・・・へへ・・」
後ろを向くとスパナを持ったまま腰を抜かしているDr.の姿があった。助けてもらえたのは非常に嬉しかった。しかし、見るからになさけなかった。
「は、早く彼のメモリカードを抜いてください・・・・!」
「ヤ・・・メ・・・」
ハッとして倒れたそいつの上にまたがりメモリカードを抜き出した。するととたんに生気のないロボットに戻った。
「すみませんでしたレイフ様。我々がいながらそのような大怪我をさせてしまうとは・・」
「い、いいんですよ。僕がいつもどんぱちしてるせいで君達が気づけなかっただけですし・・・・」
親衛隊はそう言うと敬礼をしてその場をそそくさと退散してしまった。
原因の大半は私がきたことであろうが。Dr.は私を見つけると満面の笑みを浮かべた。
「エノ!怪我は大丈夫?」
「私のことなら心配なさらずに、特に異常はありませんので。重症なのはDr.の方です。お加減は・・・」
「エノが来てくれたからぼく元気にな・・・!・・・う〜」
言っている側からDr.は痛みに顔をしかめた。
「・・・・ところで、吸血鬼の事件とは。」
「え、あぁ。最近読んでた本の奴だからあまり気にしなくていいよ。すっごく怖いからあまり思い出したくもないし・・・・」
そう言うとDr.は俯いてしまった。
しばらくの間、二人の間に重い空気が漂っていた。
「ところでエノ、メモリーカードの解析は終わった?」
「はい、とりあえず感情の部分を破壊しておきましたので再び暴れ出すようなことはありません」
そう言うとDr.はほっと胸を撫で下ろした。そこで口伝えで損傷箇所を報告する。
「ティルトの ・・・・彼のボディーの状態はかなり悪いです。大部分を損傷してます。 破壊箇所はギア、思考回路がほぼやられており、四肢を操作する基盤が吹っ飛びました。自立回路はDr.が破壊したので1から作り直す必要があります。コアは無事ですので、1からプログラミングする必要はありません。」
「あちゃ〜当たりどころが悪かったですね。・・・」
箇所を書き留めたティルトはかなりショックだったようだ。
「悪いどころではありません。更に研究室もしばらくは機能しません。貴方も私も回復次第自宅待機です。」
「最悪か〜」
「最悪です」
二人同時に深いため息をついた。
No.15 END NEXT→No16
俺の進行状況の方が最悪だろうが阿呆